映画レビュー「モンゴル」
モンゴル
◆プチレビュー◆
チンギス・ハーンの波乱の半生を描く物語。主演の浅野忠信の異様な迫力が圧倒的だ。 【60点】
12世紀モンゴル。後にチンギス・ハーンと呼ばれるテムジンは、父の毒殺、仲間の裏切り、復讐、異国での投獄と過酷な運命に翻弄されながらも、勢力を拡大しつつあった。妻ボルテとの強い絆が彼の支えだったが、兄弟の契りを交わした勇士ジャムカと戦わねばならなくなる…。
強大なモンゴル帝国を築く英雄チンギス・ハーンの名は、歴史の授業で必ず耳にする名前だが、謎に包まれた部分も多い。伝説的な人物ゆえに多くの芸術家を惹きつける。日本でも数年前に「蒼き狼 地果て海尽きるまで」という作品が作られたが、この日本映画が全編ウェットな人間ドラマで英雄を身近な存在として描いたのに対し、ロシアの精鋭ボドロフは、テムジンいう男を荒野に解き放った。ロシアではチンギス・ハーンは、いまだに侵略者と考えられ嫌われているというから、ボドロフのアプローチはかなり斬新なものに違いない。
モンゴル人であること。これが映画の根底に流れる思想のすべてだ。広大で厳しい自然環境の地で生き抜く草原の民には、私たちには理解できないような価値観もあったろう。テムジンは人災、天災、不条理までもすべて“モンゴル人ならばこうする”という考えをベースにガッツリと解決していく。それは、幼い頃に運命的に出会った彼の妻ボルテも同じだ。敵の部族に奪われて子供をはらんでも、まずは生き抜くことを心に誓った妻に対し、テムジンはきっぱりと「自分の子」と言い放つ。ウダウダと悩んだりはしないのだ。その点の根性の座り具合は妻ボルテも同じ。驚くほどの潔さにほれぼれする。歴史上屈指の英雄を、私たちの精神風土とは違う次元に置いたのはまことに正しい。
だが、映画としての不満はある。それはテムジンがなぜ大帝国を築くことになりえたかをほとんど描いていないことだ。敵の捕虜を優遇し味方として自分の兵にしたエピソードはテムジンの寛容さを示すが、それが大帝国建設へと直結したとは考えにくい。何かひとつでも通常の国ではなく大平原という自然に適した国家統治の方法を示すべきだったと思う。それは、従来の国家統治ではなく伝統を打ち破る方法だったはずなのだ。
そのようなストーリーとしての欠点を補っているのが、浅野忠信の役者魂だ。難解なモンゴル語のセリフ、厳しい自然環境や、肉体的にキツい演技の連続、各国の人材が集う現場でのコミュニケーションなど、その苦労は想像して余りあるものだ。その彼の苦悩が、まるで荒野の修行僧のような風貌となり、テムジンの演技へとつながっている。特に、激しい戦闘シーンの荒ぶる演技の中にふとみせる静寂の表情が素晴らしい。浅野忠信という俳優は、大作、小品分け隔てなく、神出鬼没の若き演技派だが、これほど根性があろうとは。日本を代表する俳優と評して、その名に恥じない役者だ。テムジンの歴史で空白の10年間を、異国での投獄による瞑想の期間と仮定したこの作品。浅野忠信の鬼気迫るいでたちで、世界史上屈指の大帝国の統治者の精神性を語る作品になった。
(シネマッシモ評価:★5つが満点)哲学的度:★★★★
□2007年 ドイツ・カザフスタン・ロシア・モンゴル合作映画
□原題「Mongol」
□監督:セルゲイ・ボドロフ
□出演:浅野忠信、スン・ホンレイ、アマデュ・ママダコフ、他
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突然、大群を率いてた事にちょっと吃驚
しました〜♪
ジャムカとテムジンが酒を飲み交わし、
ふざけあうシーンが良かったなぁ〜♪
「モンゴル」、なかなかユニークなアプローチの映画でしたね。浅忠(アサチュウ)は、もはやモンゴル人にしか見えません(笑)。映画はどうやら3部作になるようですよ。今回ストーリー的に抜け落ちた部分も描いてくれるかも?です。
ただこの映画、せっかく日本人俳優が主演してオスカーにもノミネートされたのに、やっぱり地味な印象なのか、興行的に苦戦は必須。そんな中、この作品にコメントをいただいてとても嬉しかったです。また遊びにきてくださいね。お待ちしています。
正直どうかなぁ
とおもってましたが、浅野忠信がハーンになってました。しかし 管理人さんの指摘のストーリーの穴てきな、なぜ?あんなに大帝国になったかを描いてほしかったです。他が良かっただけに残念だなぁ、と、しかし続きが観たい映画がまた増えました。浅野忠信スゴい役者ですねスクリーンには浅野はいなくテムジンその人だなぁーと。何といってもセルゲイ・ボドロフなので普通の映画になるわけはないんですが、それでも分かりやすい作品に仕上がっていたと思います。とは言っても、いきなり大軍を率いて戦ってるのにはマイりますよねぇ(苦笑)。
浅野忠信の演技は素晴らしいのひと言でした。言葉の習得だけでも大変だったはずなのに、重い剣を持って戦う姿も絵になっていました。そう言えば北野武監督の「座頭市」の時も殺気が満ち溢れてましたものネ。
先日、私もこれを見ました。つい「蒼き狼・・・」と比べてしまいますが、あちらは、大業な時代劇めいたセリフまわしに、まず違和感を覚えてしまいました。こちらは文句の付け所がなく、全編モンゴル語ですね! 妻が産んだ子なら、自分の子ときっぱり言い切ったテムジンには私も爽快感を覚えました。
欧米の人が見ると浅野忠信には東洋の神秘が感じられたのではないかと思います。多分、こういうのが、強くて不気味なモンゴル帝国、というあちらの方のイメージなのではないかと思ったりして・・・。
どうしても「蒼き狼」と比べちゃいますよね(苦笑)。私も、いけない、いけないと思いつつやっぱり比べちゃいました。モンゴル語は日本人にはとても発音が難しい言語なんだそうです。浅野忠信はあの一重瞼が効いてました。モンゴル人にしか見えませんでしたもの〜。
きっぱりと自分の子といいきるテムジンと、根性の座った女性ボルテ。両方ともあっぱれですよね。
当ブログを愛読してくれているとのお言葉、とても嬉しいです。また遊びにきてくださいね。コメントもお気軽にどうぞ!お待ちしています。


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