マンデラの名もなき看守 [DVD]マンデラの名もなき看守 [DVD]
◆プチレビュー◆
ネルソン・マンデラ公認の感動秘話。歴史の隙間には、偉人を支えた無名の人々の思いがある。 【70点】

 アパルトヘイト政策下の1968年の南アフリカ。刑務所の白人看守グレゴリーは、黒人の言葉・コーサ語が話せる理由から、反政府運動の活動家ネルソン・マンデラの担当に抜擢される。目的は彼をスパイすることだったが…。

 南アフリカ共和国での悪名高い人種隔離政策(アパルトヘイト)の終焉は、1990年代。国際社会から孤立してもなお、つい最近までその差別は公然と行われていたのだ。そんな中、マンデラは、27年間も投獄生活を強いられながら、平等な社会の実現を信じて闘った。後にノーベル平和賞を受賞する彼は、気高い信念を持った偉大なカリスマだ。だがこの映画の主人公はマンデラではない。

 主人公の看守グレゴリーは、マンデラという重要人物の担当になったことを出世の糸口と考えて喜ぶ。だが彼は、マンデラに最初に会ったときからその知的で誇り高い姿に魅せられた。マンデラを演じるデニス・ヘイスバードの威厳ある演技で、気高いオーラが伝わるようである。対する“名もなき”グレゴリーの偉大さは、自らの考えを問い直して変化した点にあった。

 もともとグレゴリーは権力に従順で、差別を仕方がないことと受け止めている。だが、マンデラの語る理想の社会に憧れるようになり、禁書である自由憲章を読み、規則を曲げて彼に便宜を図った。理想と現実に引き裂かれながらもグレゴリーが正しい道を行く様は感動的だ。“白人の常識”は間違っているのではないか。自分で考え、誤りと思えば改める。勇気を必要とするその行為は、決して易しいことではない。だが、私たち凡人はマンデラにはなれなくとも、グレゴリーには近づけるのではなかろうか。強く揺るぎないマンデラに対し、傷つきながらも確実に変化していくグレゴリー。時に弱さも見せる彼は、身近な存在に思える。これがマンデラの伝記映画でありながら、彼の脇にいた無名の看守を主人公にした作り手の意図に違いない。

 デンマークの巨匠ピレ・アウグスト監督のまなざしは、いつもリアルでシビアなものだ。2008年現在、存命の偉人マンデラだが、彼の信念の戦闘的な側面もきちんと織り込んでいるのが目を引く。マンデラは一方的で信用できない和平交渉で「暴力で作られた権力は暴力で倒すしかない」ときっぱりと言い放った。このような闘士マンデラだったからこそ、解放後に白人への報復ではなく人種間の融和を目指したことに大きな意味が生じてくる。

 白人と黒人が共に平等に暮らす社会。一人っ子のため幼少期に黒人の少年と遊んでいたグレゴリーは、その素晴らしい理想の世界を本能で求めていたのかもしれない。物語では、彼が黒人少年から教わったスティック・ファイティングの描写が非常に効いている。棒を持って戦う剣術のような独特の競技だ。黒人民族の伝統を表すこの競技に使う棒は1本ではなく2本。映画を見た後は、それは異なる人種や価値観を互いに近づける儀式のように見えた。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)歴史秘話度:★★★★★

□2007年 仏・独・ベルギー・南アフリカ合作映画 原題「GOODBYE BAFANA」
□監督:ビレ・アウグスト
□出演:ジョセフ・ファインズ、デニス・ヘイスバード、ダイアン・クルーガー、他

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