アフタースクール
◆プチレビュー◆
緻密に練られた大人の“放課後”は一筋縄ではいかない。騙される快感はクセになりそうだ。 【80点】

 一流企業に勤める木村が行方不明になった。彼の同級生の、探偵の島崎と中学教師の神野は、木村探しに奔走する。だが、追えば追うほどに、今まで知らなかった彼の姿が。女と金の臭いがするこの失踪事件とは…。

 何も聞かず、とにかく見てください。本当はこれだけ言ってこの映画評を終わりにしたいが、そういうわけにはいかない。でも、この物語の性質上、ネタバレは厳禁なので深くは語れない。あぁ、ジレンマだ。こんなに面白いのに。

 面白さの要因は、緻密に構成されたオリジナル脚本につきる。監督・脚本は、前作「運命じゃない人」で話題をさらった内田けんじ。これを見て楽しんだ人なら、今回もきっと仕掛けがあると予測がつくはずだ。それは正しく当たる。だが、どんなプロットかまではさすがに予想できないだろう。それほどこの映画のストーリーは痛快な驚きに満ちている。

 登場人物は数多いが、核になるのは3人の男たちだ。疑うことを知らない神野と、信じることを嫌う島崎は、次々に現れる木村の新事実に振り回される。にわかコンビの二人は、真面目で人がいいはずの木村につながるヤクザや愛人が登場するたびに自問する。「自分は本当に木村のことを知っているのか?」。物語の前半、観客は、彼らの常識が打ち砕かれる状況に何度も付き合うことになるが、後半の信じられない展開に備えて、小さな小道具や何気ないセリフに気を配っておこう。彼らが見聞きしたものには、実はまったく違う意味があって、それが真実への新しい道を“木村探し”という地図に書き加える。車の中にあった指輪の本当の役割を知る頃には、この映画の虜になっているはずだ。

 気を配るのは観客だけでなく役者も同じ。伏線を踏まえつつ演技するのは、かなりハードルの高い作業だったに違いない。特に大泉洋演じる神野は難役だ。映画後半でたびたび現われる回想シーンでは、一つの場面の裏の意味や別の役割が示されるが、笑いにも驚きにもとれる演技が絶妙である。一見、三面記事的な失踪事件を、後半でひっくり返す力技は、緻密な脚本と、俳優たちの効果的なアンサンブル演技が互いに支えあって成立している。

 “語りたいのに語れない”厄介な映画をあえてジャンル分けするならば、探偵ものだろうか。社会の闇や悪にも触れねばならない探偵稼業。そこで知るのは、人間同士の不思議なつながりと人生の機微だ。綺麗事だけではない世間では悪いヤツの方が上手く生きられるように思える。だが世の中はそう単純でも捨てたモンでもない。映画の最後に、全てが明かされたときの快い快感は、実は物語はシンプルで前向きなものだったと気付かせる。騙されて気分がいいなんて映画くらいのものだろう。その時こそ神野先生の声が聞こえる。「おまえがつまんないのはおまえのせいなんだ」。大人の放課後は、やっぱり奥が深い。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ビックリ度:★★★★★

□2007年 日本映画 
□監督:内田けんじ
□出演:大泉洋、佐々木蔵之介、堺雅人、常盤貴子、他

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