JUNO/ジュノ <特別編> [DVD]JUNO/ジュノ <特別編> [DVD]
◆プチレビュー◆
10代の少女の望まない妊娠を、微塵の暗さもなく描く快作。里親制度も含め、日本との違いが面白い。 【85点】

 興味本位のセックスで妊娠してしまった16歳のジュノ。中絶は思いとどまり、親友の力を借りて、養子を希望しているヴァネッサとマークという夫婦を見つけて里親の話をつける。それからジュノと周囲の人々の珍騒動が始まった…。

 望まない妊娠を描く映画は、シリアスになりがちだ。だが本作には、重苦しい空気はまったくない。風変わりな高校生ジュノのあっけらかんとした態度にとまどうやら笑うやら。でもそんな彼女の内面にも実は色々な葛藤があって…。この内側の悩みと外側の軽味の絶妙なバランスが、リズミカルで心地よい。

 何しろ、主人公ジュノが素晴らしくユニークで魅力的なキャラなのである。みんなと一緒が安心の没個性文化の日本では、なかなかこんな女の子には出会えない。妊娠という一大事に対するジュノのビジョンは「これは自分の責任」と腹をくくること。暴言すれすれの発言だって、彼女流のクールな決意表明なのだ。やせ我慢を含むにしても、相手に責任など求めず、泣き言も言わない。実に根性が座っている。娘の妊娠を知った両親が、彼女や相手を責めず、養子に出すという娘の決断を尊重する姿も、日本と違って大いに感心させられる。親と子の関係は、この映画を理解する重要アイテムだ。

 この物語には、いくつかの形の親が登場する。実の父と義理の母。二人は共に娘を愛している。さらにジュノが新聞広告で見つけた“親として理想的な”夫婦。里親制度の普及と利用法は、現実的でいかにもアメリカ風だ。弁護士立会いで書類を作り、テキパキと物事を決定する。とはいえ、すべてがドライに処理されるわけではない。理想的と思った夫婦の意外な姿が見えてくるあたりが、この作品の非凡なところだ。ホラー映画やパンクロックの話で盛り上がるマークとジュノの微妙な関係を見せつつ、子供を切望するヴァネッサの切なさを語ることも忘れない。ヴァネッサがジュノのおなかを触る場面は、女同士の母性のつながりを感じさせるものだ。それを伏線にジュノの勇気ある決断へとつなげていく巧みな展開にうなる。予定外のことが起こった時、何を最善とするか。観客も主人公と一緒に考えることになろう。

 簡単に先を読ませないヒネリの効いたストーリーを生み出したのは、新鋭脚本家ディアブロ・コーディ。元ストリッパーという超変わり種だ。主演のエレン・ペイジとジェイソン・ライトマン監督と共に、三位一体で観客の心をつかむ。センスのいい音楽やポップなアニメなど、魅力は尽きないが、サラリと描くのは、人が大人になる時に味わう痛みと優しさだ。見かけによらず懐が深い。

 最終的にはジュノの隣には誰がいるのだろうか。確かなのは、周囲の愛情と、やっと見えてきた本当の自分の気持ちだ。父親が言う「今度は自分のためにここ(産院)に来るんだよ」という言葉がグッとくる。もはや血縁だけでは家族を構成できなくなった米国社会。その片隅で奮闘する愛すべき女の子ジュノ。この物語は、そんな少女の心のアドベンチャーなのだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)音楽センス度:★★★★★

□2007年 アメリカ映画 原題「JUNO」
□監督:ジェイソン・ライトマン
□出演:エレン・ペイジ、マイケル・セラ、ジェニファー・ガーナー、他

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