ハプニング (特別編) [DVD]ハプニング (特別編) [DVD]
◆プチレビュー◆
シャマラン流のこけおどし映画。信仰への目配せも感じるが、世界の破滅の正体に苦笑するしかない。 【20点】

 ある日突然、ミツバチが消えた。間もなく、NYのセントラル・パークで人々が突然倒れる異常現象が起こり、街では自殺者が続出する。科学教師エリオットは、家族や同僚と共に安全な場所を目指して避難するが…。

 しばしば超常現象をモチーフとするM・ナイト・シャマランは、傑作「シックス・センス」の監督として有名だ。でも油断は禁物。彼の映画は、予告編の面白さと本編とのギャップでは業界随一なのだから。これ見よがしの謎を張り巡らせ、大きな落ちを用意するのが得意技だが、近年、意図的に、観客のヒンシュクを買っては喜んでいるように見える。

 本作を例えるならば、ヒッチコックの「鳥」の出来損ないと言えようか。見えない脅威によって人々が次々に死に至り、追いつめられた民衆はパニックになり逃げ惑う。言葉が乱れ、方向感覚を失い、自殺に至るそのプロセスには、ただならぬ気配が漂っていた。だが、映画の中で盛んに怖がる“それ”は、そよそよと揺れる緑の草や木々。そんなもので恐怖と言われても困ってしまう。

 物語が進むに連れて、どうやら植物が関係していると分かるが、感染の正体や地域限定であることの謎には答えない。原因やつじつまを問題にしないこの映画は、ただ“突発的な出来事(ハプニング)”を描くのみだ。情緒不安定な妻が、何かやらかすかと期待したが、それも肩透かし。世捨て人のような老婆の描写も中途半端で、この年ならフツーにお迎えがきたとさえ思えてしまう。

 自ら命を絶つ様子は異様な不気味さで、極端な仰角で唐突にとらえる空が不安感を煽り、CGに頼らない演出の工夫を感じる。この謎めいた映像で訴えるのは人類の理由なき破滅だが、これでは説明不足を通り越して映像詐欺だ。

 かつてT・S・エリオットは、その詩「うつろな人間」の中で“これが世界の終り方だ。パーンではなくシクシクと泣いて終る”と詠った。大仰で華々しいものではなく、静かに地味にやって来るのが世界の終焉という考え方は分からなくもない。クレージーな死に様で人類の罪を自覚させ、もう一度信仰心を取り戻せとシャマランなりの言葉で語りかけるが、説得力はまったくない。

 こうなったら言わせてもらうが、このノリは、おバカホラーとして名を馳せる「アタック・オブ・ザ・キラートマト」と同じじゃないか。トマトが肉食になって人を襲うという天才的なアホらしさのこの作品、映像的にはトマトはまったく人を襲わない。ただコロコロと転がっているだけなのに、人間の方がギャアッと奇声をあげて勝手に絶命するという珍作で、大いに笑える。だが本作はどうだ?!ハプニングだか何だか知らないが、中身は空っぽのくせに、自然への畏怖を装い、スピリチュアルな世界を匂わせるなど、トマトよりたちが悪い。これはB級映画だと作り手自身が明言するあたりは可愛げがあるが、落ちがないことが落ちだとは。バカらしくて付き合いきれない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)脱力感度:★★★★★

□2008年 アメリカ映画 原題「THE HAPPENING」
□監督:M・ナイト・シャマラン
□出演:マーク・ウォールバーグ、ズーイー・デシャネル、ジョン・レグイザモ、他

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