タクシデルミア ある剥製師の遺言
タクシデルミア~ある剥製師の遺言~(通常版) [DVD]
ハリウッドや日本とはまったく違う手触りの作品を作る映画作家に出会うことがある。東欧ハンガリーのパールフィ・ジョルジ監督はそんな鬼才の一人だ。チェコの映像作家シュバンクマイエルを想起させると言えば、想像しやすいだろうか。グロテスクできわどい映像でつづられるアヴァンギャルドなこの物語は、あまりにクセがある映画なので、万人にはお勧めできない。だが、気骨ある映画ファンなら、間違いなく刺激を得られる1本とも言える。
物語はオムニバス形式で、三代に渡る親子の数奇な生き様を描くもの。彼らの人生を通してハンガリーの歴史をも見据える、壮大で奇抜なクロニクルだ。第二次大戦下の人里離れた前哨地点で、上官から奴隷のようにこき使われる祖父は“性欲”を、大食いチャンピオンの父は食べては吐く妄執的な行為を繰り返して“食欲”を満たそうとする。そして、ひ弱な孫は剥製師となり、トンデモナイ芸術作品を作ろうとするのだが…。
この作品をカテゴライズするならば、ダーク・ファンタジーということになろう。徹底した悪趣味にはどこか突き抜けた陽気な気配が漂っていて、嫌悪感を感じながらも目が離せなくなる。嘔吐や生物の解体など、俗悪の極みの映像の中で、火を吹くまで性器が勃起する祖父の笑い声や、巨漢で動くことさえ不可能な父が猫を大食漢にしようと奮闘するなど、バカバカしくもユーモラスな描写があって、退屈しない。だが、剥製師の息子ラヨシュのエピソードになるとトーンが変わる。彼は、剥製、すなわち、生物の肉体の保存を追求することで、永遠を目指しているのだ。と同時にこの人物は死にとりつかれている。最終的に彼がたどりつくその行為や思想はあまりに奇抜だが、すべてのタブーを踏み越えて挑む“究極の芸術”には崇高なものさえ感じる。
タクシデルミアとは剥製術のこと。決して気持ちの良い映画ではないし、一般的な感動や美しさとも無縁。だが、社会風刺や権力批判を、悪夢のような映像美学で魅せるこんな作品も、確かに「映画」なのだ。人間の欲望を思いがけない形で覗き見したような問題作。無視するにはあまりに惜しい。
(2006年/ハンガリー・オーストリア・仏/パールフィ・ジョルジ監督/原題「TAXIDERMIA」)![]()
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現在、お盆休みモードで、1日2記事UPで私なりに頑張っております(汗)。
UPできずにストックされている作品の中から、キワモノ的感覚でこの映画を選んでみました。
「追悼のざわめき」とは、これまたカルトな…(苦笑)。
床がグルッと回ったり、絵本に見立てた夢の世界など、独特の映像感覚が面白かったですね。

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