TOKYO! [DVD]TOKYO! [DVD]
◆プチレビュー◆
東京をテーマにした3話オムニバス映画。不安と不条理が東京をTOKYOへと変えていく。 【70点】

 突然、体が木になってしまった女の子。マンホールから現れる怪人。10年間引きこもった男。どこかヘンテコな3つの物語は関係せず独立している。映画界で確かな実績を残す個性派監督3人が不思議な都市空間を読み解いていく。

 かつて外国人が日本を描けば、必ず失笑もののニッポン勘違い映画が出来上がったものだ。例えば「東京暗黒街・竹の家」、例えば「コンタクト」。おしゃれと騒がれた「ロスト・イン・トランスレーション」でさえ異国情緒の域を出ない。だが、ゴンドリー、カラックス、ジュノの3監督には、日本に東洋趣味を求める安易な視線はない。彼らの目には、マンガやオタクなどのポップカルチャーをリードする東京は、常に進化する生き物のように映っている。

 ミシェル・ゴンドリーの「インテリア・デザイン」は、駆け出しの映画監督の恋人と一緒に東京にやってきた女の子ヒロコが、自分の居場所を見つけられず、さ迷い歩く物語だ。椅子に変身するというシュールな展開に驚きつつも、何のとりえもないと思っていた自分が、誰かの役に立つことで満ち足りていく。何のために生きているのか?という普遍的なテーマなのに、どこか現実感が薄いフワフワした語り口が、すべてが不確実な若者の気分に重なっている。

 レオス・カラックスの「メルド」は、突如マンホールから出現した怪人メルドが東京の街を破壊し混乱に陥れるという、カラックス版ゴジラのような物語。恐怖や憎悪というシリアスな方向へ向かうかと思いきや、説教臭さとは無縁でアナーキーに展開するストーリーが痛快だ。菊の花と紙幣をムシャムシャ食べるという最高に深読みできる行為も、あっさりと笑い飛ばす。メルドはテロリストにして流行のアイドル。それに振り回される滑稽な現代人を皮肉っている。

 ポン・ジュノの「シェイキング東京」の主人公は10年間引きこもりを続けている男。その行動には、確固としたプライドとスタイルがある。“完璧に芸術的な”引きこもりは、誇り高い孤独なのだ。だが、ピザ配達人の美少女と目があった瞬間にそれはグラリと揺れて壊れた。地震による揺れ、恋心による揺れ。大都市に生きる人間にとってコミュニケーションとは、人格をシェイクするほどのエネルギーが必要なのだ。ここでは俳優起用の勘の良さが光った。

 特筆したいのは「インテリア・デザイン」の、狭い空間へのこだわりだ。ごちゃごちゃ文化の発信地・東京をミクロの目で見るスタンスが新しい。建物と建物の間の小さな隙間を覗けば、あるいは隙間の中から広がりを見れば、たくさんの物語が発見できる気がする。異邦人ならではのまなざしだ。

 東京は、関東大震災と東京大空襲によって2度も破壊されながら、よみがえった稀有な都市。何百年も前の建造物が今も機能しているパリや京都とは違い、新しいもの、変化するものに敏感に反応する。オリエンタリズムや過去の文化ではなく、今の、そして未来のこの街を見据えた3種類の才能が、混沌と秩序の都市TOKYOを、見事に切り取ってみせた。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ユニーク度:★★★★☆

□2008年 仏・日・韓・独合作映画 原題「TOKYO」
□監督:ポン・ジュノ、ミシェル・ゴンドリー、レオス・カラックス
□出演:藤谷文子、加瀬亮、ドゥニ・ラヴァン、香川照之、蒼井優、他

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