アイアンマン (ロバート・ダウニー・Jr. 主演) [DVD]アイアンマン (ロバート・ダウニー・Jr. 主演) [DVD]
◆プチレビュー◆
セレブな天才科学者が活躍する人気アメコミ・ヒーローものは意外なほど秀作。隠れ社会派映画でもある。 【75点】

 巨大軍事企業の社長トニー・スタークは天才科学者。自社兵器が悪の組織に渡っていることを知りいきなり廃業を宣言する。自ら発明したスーツを着て敵の兵器を破壊するアイアンマンとなるが、それを許さない人物が身近にいた…。

 アイアンマンは、マーベル・コミックを代表する人気スーパーヒーローで、誕生時はベトナム戦争が鍵となった。今回は中東に置き換え現代性をプラスしている。このヒーローの個性は、軍需産業のトップだということ。莫大な富も最先端の技術も、この設定ならすべて納得がいく。ファンタジックなのは、軍事企業のCEO(最高経営責任者)が本気で平和を願って悪を討つという部分だ。現実と非現実のブレンドこそ優れたスーパーヒーローものの極意と言える。

 もっともスタークという男、根は女好きの、いたってお気楽な大金持ちだ。昨今流行の、影があって苦悩するヒーロー像からはほど遠い。そもそも商談で訪れたアフガンでテロリストから拉致されてはじめて、自社製品が悪いヤツらに利用されているのを知るなど、いい歳をしてあまりにノーテンキ。だが驚くほど前向きで、明晰な頭脳を駆使して自力で武器を作り、状況を打破する力がある。セルフ・ヘルプ(自助)の精神はアメリカ人が最も好むところだ。

 軟禁された敵のアジトから脱出するために作った飛行可能なスーツは素朴なものだが、これがアイアンマンの素地になる。人型ロボットは、装着すれば普通の人間を超人に変えてしまうのが魅力だ。チタンと金の合成のパワードスーツが最初から完璧ではなく、試行錯誤を繰り返すプロセスはなかなか面白い。ついに最強スーツが完成してからのド迫力の闘いぶりには圧倒されっぱなしだ。

 特筆なのは、アイアンマンが肉体的な弱点を内包していること。スタークは拉致されたとき心臓を負傷するが、自動駆動の人工心臓アーク・リアクターを発明して切り抜ける。不死身であるべきスーパーヒーローが、機械の助けなしには呼吸もできないという矛盾がユニークだ。そしてこの人工心臓は彼が最も信頼する秘書ペッパーとの絆を表すツールになっていく。

 映画は、荒唐無稽なアメコミ・ヒーローものの姿をしているが、実はアメリカそのものが透けて見えて興味深い。愛と平和と正義をモットーとする強国は同時に世界一の軍需大国。メイド・イン・アメリカの兵器の数々は、自国の経済を潤す一方で、めぐりめぐって敵国やテロリストの手に渡る。自分が作った武器を持った相手と戦い、かけ引きは敵も味方もごちゃまぜ。そんな危うい関係を保つのが世界の現実だとしたら、これほどシニカルな作品はないだろう。

 こんなリアルな苦味を隠し味にしながら、本作はエンタメ映画としての魅力を忘れない。VFX満載の派手なアクションと控えめなロマンスを配して、物語が深刻になるのを避けている。極めつけは、ヒーローを演じるのが、どこかだらしない可愛さを持つ中年スターのロバート・ダウニー・Jr.だということ。命からがらで米国に帰って言う言葉が「チーズバーガーが食べたい」なのだから憎めない。この映画、観客のツボを心得ている。続編が今から楽しみだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)高齢ヒーロー度:★★★★☆

□2008年 アメリカ映画 原題「IRON MAN」
□監督:ジョン・ファヴロー
□出演:ロバート・ダウニー・Jr.、グウィネス・パルトロー、ジェフ・ブリッジス、他

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