僕らのミライへ逆回転 プレミアム・エディション [DVD]僕らのミライへ逆回転 プレミアム・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
奇想天外なアイデアの中に込めたのは映画愛。前半は大笑いし、後半は胸があったかくなる。 【65点】

 時代遅れのレンタル・ショップで、ビデオの中身が全て消去される事態が発生する。困り果てた店番のマイクとジェリーは、思いつきでハチャメチャなリメイク作品を作ったらこれが大人気に。次々に旧作・名作を撮影するのだが…。

 ミシェル・ゴンドリーは、アート嗜好でおしゃれな作風が人気だが、今回はちょっと様子が違う。コ難しい映画をもてはやしたり、ド派手なCGの大作が幅をきかす風潮に、彼ならではの流儀で反論を試みた。それには美しい映像は不要。誰もが知るヒット作をチープにリメイクするというおバカなアイデアは、予想外の映画愛を生み、観客の心をホンワリと温めた。

 今どきVHSしか置いてないレンタル・ショップの店員のマイクとジェリーは、特に映画好きでも映画オタクでもないフツーの人物。この設定が効果的である。店中のビデオが電磁波によってダメになったとき、どうせ中身が分からない客に貸すなら自分たちで作ってしまえ!なんていうトンデモないことを思いついて実行してしまうのは、映画に思い入れがないから出来る荒業だ。だが、このデタラメさ、映画草創期のハンドメイド感覚に通じるのではなかろうか。作り手たちが真っ先に夢中になり、ムチャな思いつきと勢いが映画を魅力的にしたあの頃に。

 そんな大らかな手作り感を無意識に継承してリメイクする作品が「ゴースト・バスターズ」「ロボコップ」「2001年宇宙の旅」と玉石混合なのもいい。背景はダンボールに描いたイラストだし、アルミホイルや特性ロボットスーツで七変化するなど、抱腹絶倒である。しかもこのリメイクが客にウケてしまうから、ますます痛快だ。愛すべきコメディ俳優ジャック・ブラックが演じるジェリーの根拠のない自信が、笑いを加速する。彼らの奮闘を見ているうちに、これがおバカではなく手仕事の温もりに思えてくるから、もう、映画のマジックと言うしかない。

 だが、この愉快なリメイクが大手映画会社から著作権違反と訴えられるところから、物語は鮮やかにコメディから脱皮していく。加えて古びたビデオ屋は再開発で取り壊しの対象に。さぁ、どうする?かくしてジェリーたちは最高のアイデアを思いつく。消えてなくなる小さな店とそこを愛する人々の思いで、映画はにわかに“ニュー・シネマ・パラダイス”化するから、あきれながらも感動し涙腺が緩んでしまうではないか。チープな手作り映画が、いつしか人々の心を一つに結んでいた。ささやかな魔法が、摩訶不思議な物語を好むゴンドリーらしい。

 世紀の大傑作ではないけれど、何とも憎めない映画とはこんな作品のことだ。ただ一つ苦言を呈したいのは、ヒネりすぎた邦題。見終われば何となく納得できるものの、どうにもピントがズレている。ちなみに原題の「Be Kind Rewind」とは、まだVHSしかなかった80年代のレンタル・ショップでよく用いられたフレーズで、ビデオを返却する際に“巻き戻してもらえると助かります”の意味。ゴンドリーにかかればレトロもアナログもハッピーエンドにリメイクしてくれそうだ。可愛くてクリエイティブなこの映画、大切な宝物にしておこう。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ハートウォーミング度:★★★★☆

□2008年 アメリカ映画 原題「Be Kind Rewind」
□監督:ミシェル・ゴンドリー
□出演:ジャック・ブラック、モス・デフ、ダニー・グローヴァー、他

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