イーグル・アイ スペシャル・エディション (2枚組) [DVD]イーグル・アイ スペシャル・エディション (2枚組) [DVD]
◆プチレビュー◆
ノンストップで駆け抜けるサスペンス・アクション。全編にヒッチコックの香りが漂っている。 【65点】

 コピー・ショップの店員ジェリーとシングルマザーのレイチェルは、突然、謎の女からの電話を受ける。「私の指示に従わないと死ぬことになる」と告げられ、とまどう2人。電話の声は次々に命がけのミッションを課すのだが…。

 映画とは、つくづく拡大再生産型のメディアだと思う。トーキーやカラーのような真に革新的な技術は数えるほどで、新作の役目の多くは偉大な過去を継承することにある。すべての芸術の進歩は“美しい模倣”が基本なのだ。スピルバーグ原案の本作は、サスペンスの神様ヒッチコックの応用作品のよう。コンセプトは、監視社会とテクノロジーの脅威への警鐘だ。それ自体は目新しくないが、21世紀スタイルのジェットコースター・ムービーは間違いなく観客を興奮させる。

 何しろ最初から最後までハイ・テンションで息つく暇がない。それでも、冒頭のアフガンでのテロ討伐と、ジェリーが一卵性双生児という2つだけはしっかりと覚えておこう。全く面識がなかったジェリーとレイチェルは“選ばれて”相棒となる。物語の中盤までは、逃げまくる彼らの姿を追うだけで精一杯だ。電話の指示があまりにムチャなので守りたいのか殺したいのか疑いたくなるが、その読みは確実に追っ手の先をいく。怒涛の展開すべてがヤマ場状態で、もちろん大迫力のカーチェイスも満載だ。ATMや携帯電話、街の信号や電光掲示板などを自由自在に操って2人を導く電話の女の目的とは? 女の正体と極秘のイーグル・アイ計画の実態が分かる中盤以降は、その敵は牙をむいて襲ってくる。

 それにしてもこの映画のヒッチコック度の高いことと言ったらない。まず、巻き込まれ型サスペンスというのがヒッチだ。ケーリー・グラントやジェームズ・スチュワートの上品さには劣るが、シャイア・ラブーフのポカンとした表情はいかにもこのテの物語にフィットする。広々とした平原で襲われる場面は「北北西に進路を取れ」だし、オーケストラ演奏をモチーフにするのは「知りすぎていた男」だ。D・J・カルーソーという監督、よほどのヒッチコキアンに違いない。

 謎の女の名はアリア。金色に輝く彼女と対面した主人公は驚愕するが、これは正直、予想通りだ。こんな人間離れしたマネが出来るのは他にはいない。ただ、ジェリーに比べレイチェルが選ばれた理由に説得力が薄いのが気になる。演奏する子供たちの中でなぜ彼女の息子サムなのか。あらゆる情報操作が可能なアリアなら、もっと簡単で迅速で確実な方法を選べるだろうに。そもそも、目的達成のためにこんな手の込んだプロセスが必要か?との疑問もわく。まぁ、それを言っては身もふたもなくなるが。

 ともあれ、平穏な日常は命懸けの非日常へ。最先端のテクノロジーの暴走を描いた本作の怖さは、国家がミスッたらどういうツケを払うことになるかをシミュレーションしたことだ。私たちには、国家的陰謀を知る機会も阻止する術もないが、アリアは間違いなくもう生まれている。興奮冷めやらぬまま映画館を出て、安全な現実にホッとする人も多いはず。だが本当にそこが安全かどうかは、そろそろ考えた方が良さそうだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)恋愛度:★☆☆☆☆

□2008年 アメリカ映画 原題「EAGLE EYE」
□監督:D・J・カルーソー
□出演:シャイア・ラブーフ、ミシェル・モナハン、ビリー・ボブ・ソーントン、他

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