ブーリン家の姉妹 [DVD]ブーリン家の姉妹 [DVD]
◆プチレビュー◆
若手実力派女優2人の競演が華やかな歴史劇。前後につながる実在の人物を想像しながら見ると面白い。 【70点】

 16世紀のイングランド。新興貴族のブーリン家は、男子の世継ぎに恵まれない国王ヘンリー8世に、自慢の娘で美しいアンを愛人として差し出す。だが王が気に入ったのは、誠実で気立ての優しい妹のメアリーだった…。

 女好きのイングランド王ヘンリー8世のわがままは、その後の英国を、いやヨーロッパ全体を激変させた。何しろ自分が新しい妻を迎えたいばかりに、カトリックを捨て英国国教会を作ったのだ。女のために宗教を変えたツケは、何代にも渡って払わねばならないが、これが英国に名君を生み、欧州各国を前進させ、近代国家の礎となったことを考えると、歴史というのは何が幸いするか分からない。

 アン・ブーリンは、王の愛人から王妃の地位を手に入れた女性だ。アンの悲劇的な顛末はよく知られるが、この映画では文献にほんの数行現われるだけのメアリーの存在をクローズアップして膨らませた。英国王室のゴタゴタより、一人の男性を愛した姉妹の葛藤と絆を描こうとする視点が、物語を身近にする。

 歴史に名を残した野心的なアンか、平凡な幸せを求めた心優しいメアリーか。“あなたはどちらのタイプ?”的な女性誌の特集のような発想だけはしないでほしい。それではこの映画の魅力と本質を見誤る。時に憎しみあうが深い部分で頼りあう彼女たちは、コインの表と裏のような存在。これは、姉妹という分かち難い絆で結ばれた二人の女性の、権力への挑戦の物語なのだ。権力とは、男社会、貴族社会、宗教や時代でもある。戦い方は違うがどちらも芯は強かった。

 意外だったのは、野心家アンをポートマン、温和なメアリーをヨハンソンという配役である。かつて「1000日のアン」でアンを演じたのはコケテッシュなジュヌヴィエーヴ・ビジョルドだったことを思うと、アン役は小悪魔タイプのヨハンソンが適役と思ったが、演じたのは理知的なポートマンだった。これがなかなか良いのである。特に鋭い眼光が素晴らしい。人気・キャリア・実力すべてで互角の2人に、イメージと異なる役を配した賭けは吉(きち)と出た。

 ただし史実は映画と異なり、メアリーは実はアンの姉だという。メアリーを自由に描き直し、歴史の行間を想像力で埋めることで、英国史を動かしたアンを鮮やかに照射、再構築してみせた演出が巧みだ。当時は、成り上がりの悪女と蔑まれても、現代なら、男性や家の駒となることに抗ったパワフルな女性像が浮かび上がる。王妃になってからは過酷な運命に翻弄されるアンは、我が子だけは守ろうと妹メアリーに託した。その行為が尊いものだったことは歴史が教えてくれる。

 アンの生んだ娘の名はエリザベス。男子を切望し生涯に6人の妻を持ったヘンリー8世の娘は、後に英国の黄金時代を築く名君になった。名作「わが命つきるとも」では、ヘンリー8世の離婚に反対する忠臣トマス・モアをポール・スコフィールドが熱演。そしてヴァージン・クィーンは「エリザベス」でケイト・ブランシェットが迫力の名演。歴史映画を見る楽しみは、過去に見た俳優と役柄が、今見ている作品に絶妙に映り込み、映像世界を無限に広げてくれることにある。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)華やか度:★★★★☆

□2008年 アメリカ・イギリス映画 原題「The Other Boleyn Girl」
□監督:ジャスティン・チャドウィック
□出演:ナタリー・ポートマン、スカーレット・ヨハンソン、エリック・バナ、他

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