レッドクリフ Part I スタンダード・エディション [DVD]レッドクリフ Part I スタンダード・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
アクション映画の詩人ジョン・ウーならではの三国志の世界。金城武の諸葛孔明が魅力的だ。 【80点】

 3世紀の中国。80万の大軍を率いて天下統一を目論む曹操に対し、民を思う劉備は、曹操に屈しようとしていた孫権と同盟を結ぶ。連合軍の兵力は5〜6万と圧倒的に劣るが、知将・周瑜と天才軍師・諸葛孔明は奇策を講じていた…。

 香港映画の戯画的要素とハリウッドの洗練されたテクニック、加えて中国映画らしい人海戦術で活写するのは、極上のエンタテインメント・三国志だ。ベースとなる「三国志演義」は史実とフィクションを巧みにブレンドした英雄譚。映画の軸である“赤壁の戦い”とは、西暦208年、長江沿いの赤壁で対峙した、曹操軍と孫権・劉備連合軍の水軍戦で、三国志の白眉の一つである。

 本作では、赤壁の戦いに至るまでの経緯と、人間関係の相関図を陸上戦の中で形作っていく。軍事演習や戦闘では、古代中国の兵法や、軍師の孔明が発案した奇策が俯瞰でとらえられ、独特の陣形が見事だ。これらのシークエンスは、男気溢れる豪傑たちの顔見世も兼ねていて、軍の規模や猛者たちの特徴を分かりやすく説明する。ウー監督得意のスローモーションを駆使して描く武将たちのプレビューは、映画のテンポを削いではいるが、名だたる英雄たちの魅力を端的に伝えるメリットの方が大きかろう。最初は互いに警戒していた孫権軍と劉備軍は、共に戦ううちに次第に結束し信頼し合っていく。それは両軍のリーダーも同じだ。

 そのリーダーとは三国志の中でもとびきりの切れ者の二人。圧倒的に不利な戦いを知恵と勇気で勝利に導こうとする、孫権軍の知将・周瑜と劉備軍の天才軍師・諸葛孔明だ。いずれ劣らぬ知性と人徳でならす二人のカリスマが、心を通わせるように琴を奏でる場面は、土煙と血しぶきの物語の中で、豊潤なオアシスのように美しい。互いを認め合う男たちの友情こそが、物語をリードする。さらに嬉しい驚きは、金城武の諸葛孔明が思いがけず素晴らしいことだ。英知の象徴として伝説を残す孔明は、冷静沈着でしたたかな策士のイメージだが、この天才軍師を、時におちゃめでユーモラスな若者のように、時に芸術を愛する夢見がちなアーティストのように演じて新鮮だ。ひょうひょうとした表情で、トレードマークの扇を優雅に携えながら軍を指揮する金城武の若々しい孔明に魅了される。

 ヒロイックな人物にこと欠かない三国志だが、ウー監督はこの英雄伝に、美しく魅力的な女性の存在を加えることも忘れない。曹操の野望の陰の目的が周瑜の美人妻を奪うことという設定は、今後のストーリーに悲劇の予感を漂わせる。また蜀の皇帝・孫権の、おてんばな妹の存在もフレッシュでほほえましい。この男勝りの美女は、後にひと波乱起こしてくれそうだ。

 二部構成で描くため、第一部である本作は赤壁の戦い前夜まで。いざ、決戦!というところで「続く」となるのが何とも悔しい。第二部は水と火の壮絶な戦いになるだろう。大河・長江とそこに集結する大船団を俯瞰映像のパノラマでとらえ、さらにジョン・ウー印の白い鳩の視点でその全貌を鳥瞰すれば、三国志のダイナミックな世界はもう目の前だ。魏・呉・蜀の三国が屹立した歴史の結果は先刻承知。それでも英雄たちの物語の続きを期待せずにはいられない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)スペクタクル度:★★★★★

□2008年 米・中・日・台・韓合作映画 原題「Red Cliff/赤壁」
□監督:ジョン・ウー
□出演:トニー・レオン、金城武、チャン・チェン、他

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