カフカ 田舎医者
カフカ 田舎医者 [DVD]
山村浩二監督は、日本のアニメーション界、とりわけアート系アニメで、中心的な存在だ。オスカー候補になった「頭山」をはじめ、多くの独創的な作品で評価が高い。
わずか21分という短さのこの作品は、原作を、難解な物語で知られるカフカの短編小説に求め、圧倒的な魅力の映像を作り出し、世界各地の映画祭で多くの賞を受賞した。
しんしんと雪が降り積もる寒い夜。10マイル以上離れた遠い患者のもとへ行かねばならない田舎医者は、困り果てていた。だが、突然現れた馬子に乗ると一瞬にして患者宅に到着する。神の存在を信じた医者だったが、そこには、脇腹にばら色の美しい傷を咲かせた少年が横たわっていて、何も出来ない己の無力さに絶望する。それでも自らを救うためには、自分を騙し、患者を騙して翌朝を迎えねばならないことも知っていた…。
何しろ、カフカ特有の不条理が炸裂するので、正直よく分からないストーリーではある。だが、それを凌駕するのが、圧倒的な作画の魅力だ。作成した原画は1万枚以上とも言われ、極端にデフォルメされた登場人物の造形、遠近感を無視した風景などが強烈な印象を脳裏に残す。独特の手書きの線描により、アニメーションならではのポップな世界で表現することに成功したのは、カフカの悪夢のような不条理ワールドだ。
物語の核は、孤独と不安。物語は、生きることに対する恐怖と責任に押し潰されそうになりながらも、それでも生きていかねばならない田舎医者の運命を描いているのだ。カフカは、生きていく上で、絶対的に何かを求めながらそれが手に入らない苦悩と絶望に向き合った作家。田舎医者の姿にカフカ自身が重なって見える。
声優として、人間国宝・千作ら、狂言の茂山一家、さらに芥川賞作家・金原ひとみが参加している。また、珍しい電波楽器、オンド・マルトノ(ピアノのような形をした、テルミンのような電子楽器で、現在は製作されておらず、現存するもののみの貴重な楽器)が使われていることも話題だ。
オタワ国際アニメーション映画祭、シュトゥットガルト・トリックフィルム国際映画祭などでグランプ受賞。
(声:茂山千作/茂山七五三/茂山茂/茂山童司/茂山逸平/金原ひとみ)
(2007年/日本/山村浩二監督)![]()
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