エル・トポ [DVD]
カルト映画の創始と呼ばれる作品である。この映画を評して「フェリーニの西部劇、クロサワの宗教映画」との言葉はあまりにも有名だ。ロシア系ユダヤ人でチリ出身のアレハンドロ・ホドロフスキー監督は異能の映画作家。本作では監督の他に、主演、脚本、音楽、衣裳、美術と一人六役をこなし八面六臂の活躍を見せている。ちなみにホドロフスキーの実の息子ブロンティスも息子役で出演しているが、冒頭からしばらくの間、素っ裸で馬にのせられるという気の毒な役を熱演(?)している。物語は、ガンマンのエル・トポが壮絶な魂の旅をするロード・ムービーにして、ヴァイオレンス・アクション。雰囲気はウェスタンだが、内容は宗教と哲学をミックスした不思議なテイストだ。
ストーリーは飛躍が多くアブノーマルなのだが、主人公エル・トポの造形が、そもそもワケが分からない。エル・トポは黒ずくめの衣裳を身にまとってさすらう流浪のガンマン。女に惚れたという理由で、旅の道連れの幼い息子を躊躇なく捨てる。置き去りにした息子への捨てゼリフは「悔しかったら復讐しに来い」。どこかマが抜けている気がしないでもないこのエル・トポ、女にそそのかされて、人格高潔な四人のガンマン(東洋哲学者、超能力者、自然主義者、砂漠の聖者)を非道な方法で殺害。そんなことまでしたわりには、あっさりと女に裏切られる。ここまででも十分に意味不明だが、ここからがさらにスゴい。瀕死の目にあったエル・トポは、小人や不具者といったフリークスの群れの中で目覚めるが、すでに20年の歳月が過ぎていた。そこは地底で、教会の神父に成長した息子と、運命的に再会する。地下の人々を解放するために、地上へのトンネルを掘るが、フリークスたちは地上に出た途端に町の人々によって皆殺しにされてしまう。怒りに燃えたエル・トポは神がかり的な強さで人々を虐殺、自分自身も焼身自殺を遂げる。
コロコロ変わる展開と、神のように振舞うエル・トポの価値観がブレまくるので、見るものを混乱させる。だが、全編に、異形、殺戮、子捨てなどのタブー、大量の流血や死体への偏愛嗜好など、ホドロフスキー作品に共通する美意識が炸裂し、理屈ぬきに圧倒されてしまうのもまた事実だ。カルト映画だけあって、突飛で独りよがりな部分は多いが、ストーリーそのものは意外にも追いやすい。厭世観が漂う上にグロテスクな内容は、決してポップコーンを食べながら気楽に見る類の作品ではないものの、宗教のごった煮のような味わいは他に類がなく、一見の価値があろう。
かつてメキシコ映画祭でひっそりと上映されただけだったのだが、かのジョン・レノンが本作をいたく気に入り、一時期版権を所有していたことや、続編を切望していたとの逸話のおかげで、いつしか巨大な伝説と化した。劇中、ウサギが大量に死ぬ場面は、ホドロフスキー自身が全部絞め殺したと自慢げに語っている。当時、全世界的に東洋哲学への嗜好が強かったことも、この映画がアーティストたちに支持された理由に相違ない。ちなみに、エル・トポとは“もぐら”の意味だ。
(出演:アレハンドロ・ホドロフスキー、ブロンティス・ホドロフスキー、マーラ・ロレンツィオ、他)
(1969年/アメリカ・メキシコ合作/アレハンドロ・ホドロフスキー監督/原題「El Topo」)![]()
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