ラースと、その彼女 (特別編) [DVD]ラースと、その彼女 (特別編) [DVD]
◆プチレビュー◆
リアル・ドールとの恋物語は一見キワモノだが、中身は温かくて素敵な感動作。ゴズリングの表情が繊細だ。 【70点】

 シャイで孤独な青年ラースは人付き合いが大の苦手。そんな彼が兄夫婦に紹介した恋人ビアンカは等身大のリアル・ドールだった。兄と義姉、町の人々は最初は面食らうが、ラースを傷つけまいとビアンカを受け入れていく…。

 俗に“スモール・タウンもの”と呼ばれる映画がある。平和な町でのちょっと変わった出来事をハートフルに描く作品群で、小規模なコミュニティーでしか成立しえないストーリーが特徴だ。本作はまさにそれ。雪に覆われたスモール・タウンのぬくもりが、ジンワリと胸にしみてくる。

 まず、リアル・ドールと聞いて、アンなことやソンなことを想像しているそこの貴方、この際、よからぬ思いはきっぱりと捨てよう。何しろ本作は、アカデミー賞オリジナル脚本賞にノミネートされた秀作だ。物語は、凡人が思い描く方向へは決して向かわない。とはいえ、コミカルな前半から、どうやって決着するのかと実は心配だったのだが、その着地点は見事なものだった。

 ラースが極端に人見知りするのは、母の死に責任を感じ、それがトラウマになって心を閉ざしているためだ。人と接触しても、その人がいつか自分から去ってしまうかと思うと怖くてたまらない。恐れが妄想を呼び、心の病が人形を擬人化したのだ。ラースとビアンカを診察したバーマン医師は「人形を恋人と思い込むラースの世界を、周囲が受け入れてあげることが問題解決の糸口」と助言する。それから、町の人すべてが参加した“お芝居”の幕があがった。

 面白いのは、最初はラースのことを変人扱いしていた周囲の人々が、徐々に変わっていくことだ。ビアンカを恋人と認め、パーティに招待し、仕事まで世話する。彼女に「ハーイ」と声をかけるとラースが代わりに挨拶を返す。救急車と入院は少々やりすぎだったが、町の人々が、忘れかけていた交流を取り戻したことは間違いない。本人は気付いていないが、ラースはこんなにも周りから愛される存在なのだ。そんな日々の中、ビアンカが突然倒れてしまったことから、事態は急転。生と死をみつめた真摯なドラマになっていく。

 人間は自分たちに似せた“ひとがた”を作るナルシストだと言われる。人形に恋するモチーフが映画に登場するのは必然の流れだ。ハリウッド映画「マネキン」のようにポップなファンタジーもあれば、カルトの極北「追悼のざわめき」のようなハードな作品まで、その振り幅は広い。本作の魅力は、人形との恋という突飛なスタートから、小さな町のヒューマニズムを経由して、主人公の心の再生というゴールへ至る道を、地に足をつけて描いたことだ。人とかかわるのは時に大変なことだけど、トライするだけの価値はある。ラースのように他人よりちょっと時間がかかってもいいじゃないか。この風変わりな恋物語は、寒い日に飲むスープのようだ。滋味があって心と身体が温まる。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ハートフル度:★★★★☆

□200年 アメリカ映画 原題「LARS AND THE REAL GIRL」
□監督:クレイグ・ギレスピー
□出演:ライアン・ゴズリング、エミリー・モーティマー、ポール・シュナイダー、他

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