007 / 慰めの報酬 (2枚組特別編) 〔初回生産限定〕 [DVD]007 / 慰めの報酬 (2枚組特別編) 〔初回生産限定〕 [DVD]
◆プチレビュー◆
シリーズ初の続編はボンドの心の葛藤がテーマ。007に何を求めるかで評価が変わる。 【70点】

 愛した女性ヴェスパーの裏切りと死に傷ついたジェームズ・ボンドは、彼女の死に係わる悪の組織の存在を知ることに。それは南米の某国政府の転覆と天然資源の独占をもくろむ世界支配の陰謀だった…。

 最も愛されているスパイ映画007シリーズの第22弾だが、今回は、大きく3つの面で従来のボンド映画と異なる。まず続編であること。「カジノ・ロワイヤル」終了の1時間後から物語は始まるが、前作の説明はほとんどなく、かなり不親切な作りだ。2本で1本の映画とばかりに、1時間46分を疾走する。

 次に、「チョコレート」のマーク・フォスターを監督に、「クラッシュ」のポール・ハギスを脚本に据え、人間ドラマに磐石の態勢をとりながら、シリーズで最もアクション要素が強い作品になっていること。何しろそのバトルは、ジェイソン・ボーンも真っ青なほど激しい。カーチェイスはもちろん、ビルからビルに飛び移る肉体重視の格闘や、ボートや戦闘機での追跡まで、陸・海・空とバラエティに富んだアクションで、観客のボルテージを上げまくる。愛に傷つき任務に悩むボンドは、自分をいたぶるかのように闘っている。

 3番目はボンド映画お約束の美女とのからみだ。この作品では2人のボンド・ガールが登場するが、メインは、元ボリビアの諜報員で、殺された家族の復讐に燃える美女カミーユ。ボンドと行動を共にするのだが、彼女とは同志のような絆で結ばれている。平たく言えば“寝ない”のだ!劇中の彼女は、従来のセクシーなだけのボンド・ガールとは違って、まるで彼の心を写す鏡のように思える。愛したヴェスパーの復讐と任務の間で葛藤するという物語の性質上、女とイチャつくわけにはいかないが、こんなに硬派なボンドは初めてだ。

 結論を言おう。今回のボンドはひたすらシリアスである。6代目ボンドのダニエル・クレイグは、トム・フォードのスーツのおかげか男っぷりも2割は上がっているし、アクションもキレがある。愛する女性を失って復讐心を抑えることが出来るのか。そして007としての自分を信じ、上司Mの信頼を取り戻して、本物のシークレット・エージェントになることが出来るのか。葛藤を抱える演技も合格だろう。劇中、ほとんど笑顔を見せず、ボンドがボンドになる瞬間“ビギニング”をクールにキメてみせた。

 歴代のボンドで誰が最高かという議論は常にある。元祖のコネリーから、1〜2本のみ登場のレーゼンビーやダルトン、軽さが持ち味のムーアやブロスナンらがジェームズ・ボンドを演じてきたが、このキャスティングは、シリアス系とユーモラス系に大別できよう。ボンドに求めるものがシリアスならば、この「慰めの報酬」は限りなく満足する。遊びや快楽を求めるならこれはもはやボンド映画ではない。だが繰り返す。「カジノ・ロワイヤル」と「慰めの報酬」の2本は、すべての007の前日譚だ。タキシード姿でマティーニを飲み、美女を助けて世界を救う男は、極限の悲しみを乗り越えて、最高にスタイリッシュなスパイになったのだ。荒唐無稽なテイストは、ひとまずお預け。それは本作で自分自身を見出したボンドの今後のためにとっておけばいい。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)アクション度:★★★★★

□2008年 イギリス・アメリカ合作映画 原題「QUANTUM OF SOLACE」
□監督:マーク・フォースター
□出演:ダニエル・クレイグ、オルガ・キュリレンコ、マチュー・アマルリック、他


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