レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで スペシャル・エディション [DVD]レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで スペシャル・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
幸せを求めてもがく夫婦の姿が哀しい。タイタニックのロマンスの対極にある辛らつな家庭劇。 【75点】

 1950年代のアメリカ。郊外の新興住宅街に住むフランクとエイプリルは、二人の子供と静かに暮らしている。はためには理想の夫婦に見える彼らは、覇気のない毎日に漠然とした不満を抱き、憧れのパリで暮らすことを思いつくが…。

 レボリューショナリー・ロードとは、主人公たちの瀟洒な家がある通りの名前である。幸せを具現化したその場所は、柔らかい真綿で包まれたディストピアだ。妻はかつて女優を夢見たが挫折。夫は退屈な仕事を義務的にこなすだけ。こんなはずではなかった、自分たちは特別だとの妄想にも似た思いを口に出したときから、喪失感はまるでウィルスのように二人を蝕んでいく。夫が軍隊時代に訪れたパリは、現実逃避の象徴だ。ここではないどこかに行けば幸せになれると信じる彼らは、その決心が人生の修羅場を呼び込むことを知らなかった。

 メガヒット作「タイタニック」で運命の恋を演じたウィンスレットとディカプリオ。彼らが倦怠感をかかえた夫婦の焦燥を体現するようになった成熟に目を見張る。特に、失われた夢を漠然と追う妻を演じるウィンスレットの演技は壮絶だ。不安と焦りが官能に変わる表情には凄みがある。虚ろな日々の不幸に気付いたのは夫も妻も同じだが、それでも夫のフランクは地に足を付けた現実の充足感をも知っていた。だが妻エイプリルの立つゾーンはまるで砂で作られた城のよう。ゆっくりと、でも確実に崩れていく。夫や子供を愛しているのかさえ見失い、内的に壊れ始めた罰なのか、彼女は3番目の子供を身ごもった。そのときから、夫婦の運命は決定的な悲劇へ向かって転がり始める。

 そもそも彼ら自身の夢に具体的なプランは何もない。幸せの意味やその土台を理解していないのだから当然だ。そんな夫婦の真実を見抜くのがジョンという青年だが、彼が精神を病んでいるという設定が秀逸だ。平穏で退屈な日々の虚しさと、それを払拭するパリ移住を語る二人を冷めた目で見つめ、周囲と別の意見を述べるジョン。隣人や同僚が彼らの計画を非常識と思うのが嫉妬心からだということも見抜いている。だが郊外の“理想郷”にいる人間たちは、そこがからっぽな場所だと看破し、抜け出そうとする裏切り者を決して許さない。自分たちの領域を守るためには規格外の人間を否定するしかないのだ。この物語は、実態のない夢をつかもうともがく夫婦が主人公だが、物質的な満足と見せかけの繁栄を謳歌した時代の米国の、歪んだ幸福感がにじんでいる。

 「あの人たち、やっぱり変わっていたわ」。フランクとエイプリルを理想の夫婦と称賛していた不動産屋のヘレンは、すべてが終わった後に彼らの欠点を並べ立てる。諦観の中で生きるヘレンの夫は静かに耳をふさぐ。若夫婦は、夢に押しつぶされ、世間に追い詰められ、愛にとどめを刺された。エイプリルが最後に行うおぞましい行為は、満たされない心の果てに生まれた狂気だ。監督のサム・メンデスは「アメリカン・ビューティー」で残したかすかな希望を、この美しいカップルに与えることを拒んだ。米国が輝いていたはずの時代、心のブラックホールはすでに絶望の扉を開けていた事実を突きつけるかのように。深海に沈む豪華客船より、この家庭が崩壊する轟音は心に響く。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)衝撃度:★★★★☆

□2008年 アメリカ・イギリス合作映画 原題「Revolutionary Road」
□監督:サム・メンデス
□出演:レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット、キャシー・ベイツ、他

映画レビュー用BRバナー
←応援ポチ、よろしくお願いします!