映画は映画だ [DVD]映画は映画だ [DVD]
◆プチレビュー◆
暴力を媒体に現実と非現実を生きる二人の対比が鮮烈だ。この題名は鑑賞後に効いてくる。 【70点】

 俳優志望だったヤクザのガンペは、偶然出会った人気俳優のスタから「映画に出ないか」と誘われる。スタは暴力シーンで相手役を負傷させ、苦肉の策で彼に声をかけたのだが、ガンペは、本気で殴りあうのなら出演すると答える…。

 映画というのは、現実と非現実の間を揺れ動きながら進化している芸術だ。その境界線は入り組んで曖昧だが、所詮は全てが作り物。監督は俳優にリアルな演技を求めるが、映画を見る観客はそれがフェイクであることは百も承知だ。そんな中で本物を追求する映画作りとは、何とも摩訶不思議な商売である。これは出会うはずのない二人の男が、映画という交差点ですれ違った物語だ。

 傲慢な人気俳優のスタは、ヤクザより暴力的な演技が売りだが、ヤクザのガンペに言わせれば、映画の中の殴り合いなど、子供騙しのお遊びだ。そんなガンペが実は俳優になりたがっていたという設定はなかなか面白い。裏社会で生きるしかない男は、実人生とは違う生は映画の中にしかないと本能で知っている。だからこそスタが映画そのままにキメてみせた「短い人生、無駄にするな」の言葉に心を動かされてしまうのだ。これは自分のためのセリフではないか。

 ガンペとスタの二人は、対照的でありながら不可分の存在だ。まるで磁石のプラスとマイナスのようにどうしても互いに反応してしまう。黒ずくめのソ・ジソプと、白い衣装のカン・ジファン。共に韓国芸能界の人気スターが、静と動のコントラストを体現し、ビジュアル的にも効果的だ。ただ、ストーリーには不満がある。スタを陥れるスキャンダルの真相など散漫になるだけで不要だろう。せっかく、映画の中で映画を撮るという入れ子の物語なのだ。映画の虚構そのものにこだわるエピソードに絞ってほしかったと、少し残念である。

 逆に評価したいのは、現実そっくりなのに現実とは異なる、映画のパラレル・ワールドを物語に活かしたセンスだ。“現場の神”である監督が、普通なら係わるだけでビビるヤクザのガンペの演技に、わざとのようにダメ出しをするなど、思わず笑ってしまう。共演女優の入水自殺場面を本気にする場面もしかりだ。映画は何度でも撮り直しがきくが、人生は一度きり。このあたりを深読みすれば、作品のメッセージも見えてこよう。

 不器用な恋や仲間の裏切りなどを経て、ついにラストシーンの撮影の日が来た。「ラストは変えない。俺が勝つ」とスタ。「おまえの好きにすればいいさ」とガンペ。映画は無事に完成するのだろうか。泥まみれの殴り合いの末に、二人の間に友情めいた何かが生まれた気配がするが、ここで油断は禁物である。新鋭監督チャン・フンの師匠は鬼才キム・ギドクだ。彼が原案・製作を務める物語が、なごやかに終わるはずはない。それまでとは桁違いに凄惨な暴力シーンで返り血を浴びた観客は、改めて教えられることになる。ヤクザはヤクザにすぎず、俳優は俳優にすぎない。そして、映画もまた映画にすぎないのだと。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)バイオレンス度:★★★★☆

□2008年 韓国映画 原題「MOVIE IS MOVIE」
□監督:チャン・フン
□出演:ソ・ジソプ、カン・ジファン、ホン・スヒョン、他

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