大統領の陰謀
大統領の陰謀 [DVD]
ロバート・レッドフォードがプロデューサーを務め、ウォーターゲート事件を告発した社会派映画の秀作。各方面からの圧力もあり、レッドフォードが企画から作品化するまで3年も費やされたという力作だ。原作は、ウォーターゲート事件を追ったワシントン・ポスト紙の記者カール・バーンスタインとボブ・ウッドワードが共同で執筆した追跡ルポルタージュ小説である。映画は、ドキュメンタリー・タッチながら非常にスリリングだ。
1972年6月17日深夜、ワシントン。民主党本部があるウォーターゲート・ビルに5人の男たちが侵入、盗聴器を仕掛けようとしたが、警備員に見つかり警察に通報された後、不法侵入の現行犯で逮捕された。当初、この事件は狂信者たちが起こした三流事件とみなされ、ホワイト・ハウスとは無関係と報じられたが、ワシントン・ポストの2人の記者バーンスタインとウッドワードは、何かがおかしいと感じ、事件を探り始める。
当時の与党である共和党のトップ、すなわち大統領が、野党・民主党を盗聴する。これは国家の自由な選挙制度と市民のプライバシーを破壊する大変な犯罪だ。謎の人物“ディープ・スロート”の存在や、事件を葬ろうとする国家権力の圧力、細かい部分に注目しながらあらゆる人物に取材を重ねる根気強さなど、映画は政治ドラマとしてもサスペンス映画としても一級で、見応えがある。結果、この作品は、大統領が関与した侵入事件と隠蔽工作を再現するという前代未聞の大胆な政治告発をやってのけた。
ベテランでたたき上げの記者カール・バーンスタインを演じたダスティン・ホフマンと、新人記者で高学歴のエリートのボブ・ウッドワード役ロバート・レッドフォードの競演も素晴らしい。加えて、気骨のある言動で彼らの取材活動を支えた編集主幹ベン・ブラッドリーを演じたジェイソン・ロバーズも見事だ。彼はこの役でアカデミー助演男優賞を受賞する。また、美術・装置も隠れた見どころで、ロケ地である国会議事堂や大蔵省、FBIなど政治を司る実在の場所が多く登場する一方、撮影許可が下りなかったホワイトハウスの内部は、美術スタッフが忠実に再現した労作だ。
二人の記者の記事は、政府を窮地に追い込み、やがてニクソン大統領を辞任させることになる。リチャード・ニクソンは、歴代でただ一人任期中に辞任に追い込まれた不名誉な大統領だ。元大統領が犯した犯罪は紛れもないものだったのだが、結局、謝罪なき会見を最後に政界から姿を消すことになる。
映画「フロスト×ニクソン」で描かれるインタビューの目的は、ウォーターゲート事件によって辞任に追い込まれたニクソンから、国民に対して謝罪の言葉を引き出すことだった。「大統領の陰謀」は、米映画が持つ“告発の力”を示した政治映画だと言える。
(出演:ダスティン・ホフマン、ロバート・レッドフォード、ジェイソン・ロバーズ、他)
(1976年/アメリカ/アラン・J・パクラ 監督/原題「All the President's Men」)![]()
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