レッドクリフ Part II -未来への最終決戦- スタンダード・エディション [DVD]レッドクリフ Part II -未来への最終決戦- スタンダード・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
またもジョン・ウーの悪い癖が出た。それでも、待ちに待った赤壁の戦いに興奮必至である。 【60点】

 西暦208年。撤退した曹操軍が80万の大軍を率いて逆襲。劉備・孫権の軍は、5万と圧倒的に戦力で劣る上、敵の策略で疫病が蔓延する。戦意を喪失し劉備は撤退、連合軍は分裂してしまう。諸葛孔明だけは周瑜の元に残るのだが…。

 大ヒットした歴史絵巻のパート2は、全編これスペクタクル。パート1では、いざ、決戦!というところでプツリと終った物語に拍子抜けした観客も多かったろう。そのフラストレーションを、今度こそぶっちぎってくれる完結編である。赤壁の戦いは、三国志の中でも特別にエモーショナルな合戦だ。だが、ジョン・ウーという人は、いつだってやりすぎる悪い癖がある。

 ウー監督流のサービス精神なのか、香港映画の娯楽の素地がそうさせるのか。何しろ彼は大の爆発好きだ。メリハリという言葉を忘れたかのような爆破に次ぐ爆破で、何とも騒々しい。火薬の量を誇示するように延々と続く戦闘シーンに、いつしか、アジアの歴史大作のハリウッド化という図式が浮かぶ。何より、前作がなくても本作だけで成り立つ物語なのだ。もしやパート1は、ジョン・ウー得意の長い長いスローモーションだったのか。

 個人的に期待していた女性の活躍だが、文字通り“女子供”的で、哀しくなった。決戦を前に勝手に敵の司令官に会いに行く周瑜の妻・小喬といい、兵士に変装しスパイ活動をする孫権の妹・尚香といい、敵陣に長居が過ぎる。女性の活躍で現代性をもたせる意図はわかるが、ここでもやっぱりやりすぎなのだ。こういうディティールの甘さがジョン・ウー作品を真の人間ドラマから遠ざける。まぁ、ウー監督に女を描けという方が無理な相談なのだが。

 文句を並べてしまったが見所は山ほどある。ダイナミックな物語の中、少数の連合軍が知力で大軍を破るプロットは“判官贔屓”の伝統を持つ日本人のツボに間違いなくハマるだろう。10万本の矢を集める孔明の奇策の興奮。激しい炎が揺らめく海上戦の熾烈。相変わらず美しく魅力的な登場人物たち。すべてが映画的興奮に満ちている。特に、天候を読み、風水を操り、ベストの瞬間に思いもよらない方法で戦う孔明のビジョンは別格だ。気象を制するものは天下を制す。現在でも、市場経済やスポーツなどあらゆる分野に共通する絶対ルールだ。自然という巨大な力を武器に変えるからこそクライマックスは神懸かる。

 勝負を決したのは東南の風だった。風とは古来より目に見えないものを象徴し、深い意味を持つ空気の流れ。“風はいずこより来たりて、いずこへ行くかを知らず。されど、風の吹くところ命が生まれる”という。天候を熟知した天才軍師は、やがては三国すべてが潰(つい)え、新しい国が興る運命を見通していたのだろうか。悠久の歴史には、カンマはあってもピリオドはない。英雄たちは見果てぬ夢を追い、風のように消えていくさだめだ。歴史に名高い赤壁の戦いもまた、風の通過点に過ぎない。「勝者はいない」。このセリフは、いみじくも、傑作「七人の侍」のラストと同じ言葉だった。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)副題がクドい度:★★★★☆

□2009年 米・中国・日本・台湾・韓国合作映画 
□原題「Red Cliff PartII/赤壁 決戦天下」
□監督:ジョン・ウー
□出演:トニー・レオン、金城武、ヴィッキー・チャオ、他

映画レビュー用BRバナー
←応援ポチ、よろしくお願いします!



レッドクリフ Part II −未来への最終決戦−@ぴあ映画生活