天使と悪魔 コレクターズ・エディション [DVD]天使と悪魔 コレクターズ・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
前作以上の謎とスピード感で描く歴史犯罪ミステリー。駆け足の謎解きを重厚な背景がサポートする。 【65点】

 宗教象徴学の権威、ロバート・ラングドン教授は、秘密結社イルミナティが復活したことを知り、教皇が急死したヴァチカンへと向かう。次期教皇候補の暗殺を阻止するべく、ガリレオの暗号コードの解明に挑むが…。

 もしも映画というメディアの定義を、物語の内容を分かり易く視覚化した娯楽と解釈するならば、この作品こそ王道と呼ぶにふさわしい。宗教学、歴史学、科学と膨大な知識を必要とする内容を、美しい映像とスピード感たっぷりの演出で活写する。これぞエンタテインメント。予備知識のない人間をも楽しませ、知的好奇心をくすぐるお得な内容だ。「天使と悪魔」は、映画では「ダ・ヴィンチ・コード」の続編になるが、原作はこちらが先に出版されている。

 テーマは宗教と科学の対立。敵役は、16〜17世紀に科学者たちが設立した秘密結社イルミナティだ。映画は、信仰の邪魔になるという理由で迫害された天才たちの集団が現代に復活したという設定だが、蘇ったイルミナティが行なう処刑の方法は、残虐かつ意味深い。宗教と芸術と科学に目配せしながらの復讐は、仕掛けも実に手が込んでいる。広範な教養がないと謎解きは難しい。

 そこで登場するのがラングドン教授なのだが、今回要求されるのは、頭脳と共に体力だ。次期教皇を選ぶコンクラーベの日に次々に起こる暗殺とその後の惨劇を阻止せねばならない。タイムリミットは24時間。時間と戦いながら、時に窒息しそうになり、時に水に飛び込む大奮闘でローマ市内を駆け巡る。そのためか、難解な符合が示されても、彼はあっという間にその意味を理解して次へ進む。「○○とは何だ?」と首をひねってから「あっ、そうか!」とひらめくまでの平均時間は約2秒。トントン拍子とはこのことだ。主人公が披露するうんちくに耳を傾け、じっくり味わう余裕がないのが玉にキズである。

 謎解きが駆け足なのは否めないが、ヴァチカンをはじめ、イタリアの壮麗な文化遺産が背景のせいか、不思議と軽く見えない。これが歴史の底力というものだろう。耳慣れないキーワードも、スムーズなセリフで解説してくれるので特に問題ないはずだ。それでも、教皇の侍従で、教皇不在時の最高権力者であるカメルレンゴという役職はしっかり覚えておこう。あらゆる局面で事件の鍵を握るカメルレンゴを演じるユアン・マクレガーが、トム・ハンクスに「あなたは神を信じていますか」と問うシーンは、思わず居住まいを正しそうになった。物語は二転三転し、思いがけない動機と真犯人が現われることに。それに一役買うのが、宗教と対立するはずの科学の要素・テクノロジーなのだ。

 派手なアクションや大爆発も用意され、典型的なハリウッド大作には違いないが、宗教象徴学者があらゆるシンボルの意味を解きながら、知的で大胆な仮説を打ち出すのがこのシリーズの醍醐味である。信仰は尊いが、宗教、特に権力や政治と結びついたそれは、うさんくさく血生臭い逸話にこと欠かない。歴史を紐解けばいくらでもネタはあろう。さらに、信仰が狂信へと変わり他者を排除する暴挙は、いつの時代も無縁ではない。映画のラストに印象深いセリフがある。「宗教には欠点があるが、それは人間に欠点があるからだ」。宗教と科学の善良な側面を見据えて融和をはかる“シンボル”を見逃してはならない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)スピード感度:★★★★★

□2008年 アメリカ映画 原題「ANGELS AND DEMONS」
□監督:ロン・ハワード
□出演:トム・ハンクス、アイェレット・ゾラー、ユアン・マクレガー、他

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