消されたヘッドライン [DVD]消されたヘッドライン [DVD]
◆プチレビュー◆
巨大な権力にペンの力で挑むポリティカル・サスペンス。終盤、ひねりすぎるのが惜しい。 【70点】

 ワシントングローブ紙の敏腕記者カルは、黒人少年の射殺事件と、国会議員コリンズの部下で愛人の女性が突然死した事件に、奇妙な共通点を嗅ぎ取り調べ始める。やがてそこに軍事企業ポイント・コープ社の影が見え始めるが…。

 もともとは英国BBCのTVシリーズで、リメイクとして設定を練り直し、俊英脚本家たちが一本の映画にまとめたのがこの「消されたヘッドライン」である。ジャーナリズムと国家権力の攻防というと、名作「大統領の陰謀」を思い浮かべるが、本作の内容はメディアの危うさと、戦争という“産業”の実態を浮き彫りにする、別種の緊張感に満ちたものだ。

 物語は、カルとコリンズの関係性を軸に描かれる。二人は浅からぬ仲で親友同士だが、カルは、時には違法スレスレの取材も辞さない男だ。奇麗事だけではヘッドライン(新聞の大見出し)を飾る記事を書くジャーナリストにはなれない。コリンズに友人として接する反面、情報源として利用もする。そんなブンヤ魂の権化のような男を、でっぷりと太ったラッセル・クロウが熱っぽく演じて上手い。新米だが優秀なWEB版記者デラや豪腕女性編集長キャメロンなど、それぞれの熱意が物語を牽引し、二転三転しながら真実に近づいていく。

 この“二転三転”が本作の急所なのだ。議員のスキャンダルを発端に、警察との駆引き、政治圧力、謎の殺し屋と、物語は危険なミステリーへと転がっていく。やがて事件は、軍事をアウトソーシングするビジネス提携、つまり戦争をめぐる企業と政界の癒着へとたどり着く。国内の安全保障まで商売道具にする謀略を糾弾するコリンズは、一見正義の側だが、コトはそう単純ではない。物語は、終盤に次々に新事実を用意し国家から個人へと話が収縮してしまった。

 だが、ケヴィン・マクドナルド監督は、イディ・アミンもクラウス・バルビーも、人となりを掘り下げることで彼らを偶像化した社会そのものを炙り出してきた。それゆえ本作でも視点を国家権力へと向けず、一個人の苦悩として描いたのだろう。巨大な陰謀の激震の渦中で真実を探る武器もまた、カルのような古参の記者の誇りとひらめきという個の力でしかない。ジャーナリズムの面目は幸いにも保てたが非常にきわどい勝負だったのだ。次に勝てる保証はない。だからこそ、カルとデラの絆が、安易な恋愛関係ではなく師弟関係になったことは建設的に思える。近年の新聞ばなれにメディアも旧態では生き残れない。真実の報道のためには内外の圧力と戦わねばならない時代なのだ。

 報道の正義を正面から描くことができた70年代とは違う混迷が、現代の米国には漂っている。サスペンスとしてひねりすぎて、社会派映画の比重が低くなったのが惜しいが、それでもこの映画のメッセージ性は損なわれていない。時代の変化が政治の腐敗を生んだなら、ジャーナリズムとて危うい存在であることに変わりはない。発行部数増加のために報道が魂を売る日が来ないと誰が言いきれよう。エンドロールに映る輪転機は本物のワシントン・ポストの機械だという。この映画の裏側のテーマはジャーナリズムの衰退への警鐘だということに気付かねばならない。朝刊の一面に刷られるのが真実である今のうちに。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)スリリング度:★★★★☆

□2009年 アメリカ映画 原題「STATE OF PLAY」
□監督:ケヴィン・マクドナルド
□出演:ラッセル・クロウ、ベン・アフレック、ヘレン・ミレン、他

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