映画 ハゲタカ(2枚組) [DVD]映画 ハゲタカ(2枚組) [DVD]
◆プチレビュー◆
秀作TVドラマの劇場版。巨費が動くマネーゲームと現実の不況が絡み合い、異様な迫力がある。 【75点】

 非情な手段で企業を買い叩き“ハゲタカ”の異名を取った天才ファンドマネージャー鷲津政彦は、盟友の芝野の訪問を受ける。日本を代表する大企業アカマ自動車を、中国系巨大ファンドの買収から救ってほしいと頼まれるが…。

 TVドラマの劇場版が大ヒットする中、人気とは裏腹にその中身のなさに脱力する映画ファンは多い。だがNHKで放送された秀作金融ドラマの続編である本作の質は保証する。企業とそれに係わる人間を見事に照射するストーリーには、派手なCGも華麗な恋愛もないが、素人には難しい経済ドラマを、分かりやすく、かつスリリングに描いて見応えがある。さらに、現実に起った金融危機に沿って練り直したリアルな脚本が、作品のレベルを引き上げた。今回の壮絶なマネーゲームの相手は、何かと話題の中国である。

 敵役は、劉一華(リュウ・イーファ)という男。残留孤児三世で“赤いハゲタカ”と呼ばれる謎の人物だ。潤沢な資金を背景に、さまざまな技と謀略で鷲津とアカマ自動車を追いつめていく。劉自身の背景や中国の国家的思惑、やがてたどる運命の描写には強引な点もあるが、玉山鉄二がクールに演じる野心家は魅力的だ。不幸な過去を持つ劉が言う「金を粗末にするな」のセリフには、鬼気迫るものがある。ある理由で人一倍アカマ自動車に対する思いを抱える劉。彼は、日本を救うのか、それとも破壊するのか。

 進退窮まったかに見えた鷲津の打った大胆な作戦で、買収劇は意外な方向へ転がっていく。鷲津がアカマ自動車を救うホワイトナイトを引き受ける理由が曖昧なのが気になるが、多くの観客は、彼の心の底にある静かな闘志を見るだろう。とりわけ、再び日本のマーケットに戻り、国家規模の買収戦争の大勝負に挑みたいという、抗い難い欲求を。人や企業のさらに上に存在する国同士の対峙。このスケールの大きさが、映画版のハゲタカ・ワールドの真髄だ。

 それにしても、大森南朋が主演の映画を見ることになろうとは。この人こそ、日本映画界の名バイプレイヤー。主役級の役でも、存在感の薄さで味を出す。地味なルックスをいかして、普通のサラリーマンから殺し屋、果ては死体まで、どんな役でもこなす究極の脇役だ。そんな彼が堂々と主役を張る姿を見て嬉しいような残念なような…。いずれにしても「ハゲタカ」は彼の代表作になろう。

 買収ビジネスを通し、深みのあるドラマを骨太なタッチで描く本作は、大人のための映画だ。日本企業が外国に乗っ取られるのを阻止するべく奮闘するという愛国心に訴える内容は、グローバリズムの観点からは賛否があろう。だが、心の芯に響く“ものづくりへの想い”は、必ず共感を呼ぶ。合理主義の隙間にある人間の情熱は、善悪のものさしでは単純に測れないものだ。ハゲタカは蔑称だが、経営危機に瀕した企業を買収して再生させるのが本来の役目。マネーゲームと呼ばれる攻防戦は、修羅場を戦い抜く主人公にとって“生”の証だ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)シリアス度:★★★★★

□2009年 日本映画
□監督:大友啓史
□出演:大森南朋、玉山鉄二、栗山千明、他

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