ハリー・ポッターと謎のプリンス (1枚組) [DVD]ハリー・ポッターと謎のプリンス (1枚組) [DVD]
◆プチレビュー◆
シリーズ第6作は、想像を絶する悲劇とユルい青春恋愛模様が錯綜。マニアックな1本になった。 【65点】

 闇の帝王ヴォルデモート卿が復活し、その力が強まる中、ハリーとダンブルドア校長は、敵の過去の秘密を探り、それを手がかりに魔法界と人間界を守ろうとする。校長の旧友のスラグホーンをホグワーツの教授として迎えるが…。

 公開が延びてヤキモキしたファンが多かったことだろう。やっとお目見えした大人気ファンタジー第6作だが、本作は、過去のハリ・ポタシリーズとは決定的に異なる点がある。それは、小説が完結し、多くのファンが物語の結末を知った上で映画を楽しむであろうということだ。長尺の原作の映画化は、省略部分をどうさばくかが腕の見せ所なのだが、全体像を把握したデヴィッド・イェーツ監督は、少なくとも迷いなく演出できたことだろう。

 本作はクライマックスの序章と位置付けられるが、フィナーレのカタルシスを意識してか、とにかくダークで悲劇的だ。ポイントは2つ。まず、ヴォルデモート卿の過去が明らかになること。トム・リドルという名で登場する、並外れた魔力を持った宿敵の、孤独で不幸な少年時代が明かされる。彼が邪悪な力を身に付けた秘密を知るのが、新キャラのスラグホーン教授だ。名優ジム・ブロードベント演じるこの教師は、魔法薬学が専門。虚栄心が強く、魔法界一の有名人ハリーを教え子とすることに執着する。ということは、飛び抜けて優秀な生徒だったトムとも深い関係があるということだ。それを察するダンブルドア校長は、ハリーを教授に近付けると同時に、決戦に備え徹底的に個人授業を施す。以前のハリーなら、悩んだりイジケたりしていただろうが、もう彼に迷いはない。ハリーの覚悟が、作品全体の悲壮感を際立せる要因でもある。

 そして終盤に待ち受ける、ハリーとホグワーツにとって、まさかの悲劇的な出来事が本作の山場。ハリー・ポッターはこれまでも大切な人を次々に失ってきたが、ヴォルデモートと闘うためとはいえ、あまりに大きなこの犠牲は、ホグワーツを打ちのめす。さらに今回はハリーの周辺に不穏な“謎のプリンス”の存在が。もはやホグワーツは安全な場所ではない。猜疑心、陰謀、死。ホラー映画かと見紛う暗い映像と展開に、気持ちが萎えてしまいそうだ。

 だが、決して陰鬱なムードばかりではない。青春真っ只中のティーンエイジャーの周囲には、どんな非常事態でも、恋の嵐は吹き荒れる。ユルい恋愛バトルが繰り広げられるが、コトをややこしくするのが、魔法学校ならではのアイテム“惚れ薬”だ。ハリーはロンの妹ジニーに惹かれ、ロンは節操のない恋愛モードに突入。そんなロンを見つめるハーマイオニーの恋心は報われるのか。ロマンスの花が咲き乱れる“ホグワーツ青春白書”で気分転換しつつ、打倒ヴォルデモートの作戦を練る。緩急という意味ではシリーズ屈指だろう。

 さて、いよいよ次回は最終章。決戦は目前だ。といっても「死の秘宝」は2部構成で公開予定なので、私たちはあと2回ハリーに会える。この物語の主人公は、いつまでも子供ではいられない。だが、自分が“選ばれし者”である自覚と決意は十分にある。クライマックスへのカウントダウンは始まった。悲劇を決して無駄にしないと誓って見守りたい。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)シリアス度:★★★★☆

□2009年 アメリカ映画 原題「HARRY POTTER AND THE HALF BLOOD PRINCE」
□監督:デヴィッド・イェーツ
□出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、他

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