サマーウォーズ [DVD]サマーウォーズ [DVD]
◆プチレビュー◆
田舎の大家族が世界の危機を救うミスマッチが面白い。草食系男子のがんばりに拍手喝采だ。 【80点】

 数学の天才で内気な高校生ケンジは、あこがれの先輩ナツキの誘いで、彼女の田舎の長野を訪れ、大家族の仲間入りをするハメに。だが、メールで届いた不審な数学クイズをうっかり解いたことから、世界の危機を招いてしまう…。

 核家族は当たり前、隣に住む住人の顔も知らず、隙あらば引きこもってネットの世界に埋没する日々。人間関係の温もりと煩わしさのどちらも知らない、イマドキの若者にとって、総勢30名に及ぶ旧家一族が顔を揃える“個性豊かなご親戚”という構図こそ、ミラクル・ワールドではあるまいか。この物語は、秀作アニメ「時をかける少女」のスタッフが再結集して放つ、人呼んで“大家族アクション・ムービー”。世界中をテロの脅威にさらすデジタル・モンスターに立ち向かうが、さて、このタフな戦いの勝機はどこにある?!

 狙われたのは、世界で10億人以上が利用するOZ(オズ)だ。それは、ショッピングやコミュニティだけでなく、行政までもが参加するネットサービス。この上なく便利だが、社会がネットのインフラに依存する以上、テロリズムの標的になる。ケンジのアカウントがハッキングされ、サイバーテロの犯人にされてしまっただけでなく、宇宙の小惑星探査機が地球めがけて暴走を始める気配も。元凶の人工知能を開発したのが、ナツキの親戚の一人だったことから、戦国武将の末裔の陣内(じんのうち)家を束ねる90歳の曾祖母・栄の怒声が飛ぶ。「身内がしでかした不始末は、一家でカタをつけるよ!」。いよっ、待ってました!と叫びたくなるが、ここは「武運長久お祈りします」と言うべきか。

 しかし敵もヤワではない。仮パスワードでログインしてみると、謎のアバター(ネット上の分身キャラクター)・ラブマシーンは、世界中のアカウントをかき集めて巨大し、化け物と化していた。バーチャル・ワールドでは、カラフルかつグロテスクなビジュアルに目を見張る。一方、リアル・ワールドでは、朝顔の花を眺めながらツルツルと素麺をすする図に癒される。メリハリとはこういうことかと感心している場合ではなく、事態は一刻の猶予も許さぬ状態に。

 サイバーテロは目的も実態もない強大な悪意で、打つ手はないかに見えた。だが、誇り高き老婆・栄の信念は「人の力を信じること」。驚くべき人脈で、システム回復のネットワークを短時間で作り上げるが、OZの混乱が大家族に思わぬ悲劇をもたらすことに。一族は悲しみにくれるが、こうなったら負けるわけにはいかない。親戚それぞれの裏技とケンジの数学力、ナツキの強い想いが“夏の陣”の火蓋を切り、戦いは想像を超えたクライマックスへ。「時かけ」を思い出す甘酸っぱい恋愛を隠し味にしたスリリングな展開は、興奮必至だ。

 物語のプロットは、テクノロジーの暴走という古典的なものだが、光ったのは、現実世界の大家族の騒動と仮想空間のバトルのせめぎあいを交互に描いた立体感だ。さらに、あらゆる世代の力が集結しハイテクの巨悪に立ち向かう点が「サマーウォーズ」の大きな魅力である。家族という普遍的なツールは、いざという時、最強のプログラムになる。アナログとデジタル。どちらかを選択するのではない。これは、両方の連合軍による、高らかな勝利の物語なのだ。ほら、陣内家の大事な家族、犬のハヤテも笑っている。 

(シネマッシモ評価:★5つが満点)マンパワー度:★★★★☆

□2009年 日本映画
□監督:細田守
□出演:(声)神木隆之介、桜庭ななみ、谷村美月、富司純子、他

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