3時10分、決断のとき [DVD]3時10分、決断のとき [DVD]
◆プチレビュー◆
勧善懲悪ではない複雑な面白さがある異色西部劇。オリジナルに比べアクション度がアップした。 【70点】

 妻と二人の息子と共に牧場を営むダン・エヴァンス。借金が返せず生活が困窮したため、強盗団のボスを護送する仕事を引き受ける。最初は報酬が目当てだったが、ダンは男の誇りをかけ、この危険な仕事をやり遂げる決意をする…。

 全米では2007年に公開され大好評、オスカーにもからんだ作品だというのに、日本公開まで随分と時間がかかった。西部劇が作られる数はめっきり減ったが、それでもアメリカ人の心の原風景であるこのジャンルは根強い人気がある。もっとも、今やそのアメリカ魂を演じるのは、オーストラリア(生まれはNZ)とイギリス・ウェールズの俳優だ。しかし、この二人が意外なほど良い。

 タイトルにある3時10分とは、3時10分発のユマ行き列車のこと。逮捕したベン・ウェイドを刑務所に入れるためにはその列車に乗せねばならないが、目的地の駅までの途中には、ボス奪還を狙う手下の一味や、アパッチ族の襲撃、さらにウェイドに恨みを持つ男たちなど、数々の障害が待ち受ける。そんな中、互いに警戒しつつも善玉ダンと悪玉ウェイドの間に不思議な絆が生まれるのが興味深い。というのも、ウェイドという男、頭がよくクールで、優しさと非情さを併せ持つ魅力あるキャラなのだ。いい悪役はいい映画の必要条件のひとつと言える。物語は、男同士の誇りが共鳴し、スリリングな局面を迎えていく。

 だが、この話の裏側には単純な善悪ではない屈折した事情がある。南北戦争では狙撃の名手だったダンは、今は悪どい地主から嫌がらせを受けている。妻に苦労をかけ、息子たちに毅然とした姿を見せられない。その悔しさは、生活苦から卑屈になった自分への憤りだ。一方ウェイドは、親に捨てられ誰の力も借りずに生きてきたならず者。命懸けで護送の仕事をするダンに、羨望にも似た感情を抱くのは、自分とは無縁の“家族”の存在をダンの後ろに見たためだ。

 それにしてもクリスチャン・ベールという役者は損な人だと思う。主役クラスの上手い俳優なのにいつも共演者に食われている。「ダークナイト」では故ヒース・レジャーに、「ターミネーター4」では人間と機械の合成キャラに見せ場をさらわれた。本作でも終始ラッセル・クロウにおされているベールだが、クライマックスの演技は素晴らしい。なぜ自分がこのやせた土地にこだわるのか、なぜ護送の仕事に命を懸けるのかを話すシーンは泣かせる場面だ。その後のクロウの予想外の行動も、ベールの男気あってこそである。

 借金のために護送の仕事を引き受けたダンに、ウェイドが「金をやるから自分を逃がせ」と誘惑しプレッシャーをかけるあたりは、まるで心理劇のような緊張感で、思わず息をのむ。はたしてダンはどんな決断を下すのか。オリジナルの「決断の3時10分」(1957)は隠れた名作だが、本作とはラストが異なる。オリジナルが、立場の違う男同士の奇妙な友情の物語だったのに対し、リメイクの本作で重視したのは父から子へ伝える本当の男らしさ。それは、命よりも大切な誇りを守ることに他ならない。家族の絆が希薄になり、人間関係も利害や競争が優先の現代、この愚直なまでの生き様は心に沁みる。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)男気度:★★★★☆

□2007年 アメリカ映画 原題「3:10toYuma」
□監督:ジェームズ・マンゴールド
□出演:ラッセル・クロウ、クリスチャン・ベイル、ピーター・フォンダ、他

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