ウルヴァリン:X-MEN ZERO [Blu-ray]ウルヴァリン:X-MEN ZERO [Blu-ray]
◆プチレビュー◆
「X-MEN」のスピンオフ作品はウルヴァリン誕生秘話。厭世的な彼の性格が納得できる。 【65点】

 幼い頃に兄ビクターと共に特殊能力に覚醒して以来、人としての幸せを捨てて生きてきたローガン。やっと愛する女性に巡り会ったが凶暴化したビクターによって彼女は殺される。復讐を誓うローガンは謎の巨大組織と取引するが…。

 アメコミの映画化の中でも「X-MEN」シリーズは特別に人気がある。その理由は、チームで戦う個性と、ミュータントたちの多彩な能力の面白さ、さらに登場人物の悩みとせめぎあいが、ドラマとして奥深さを醸し出すためだろう。「X-MEN」には魅力的なキャラが多いが、とびきり危険で興味深いのがウルヴァリンだ。彼の最大の謎は、過去の記憶をすべて失っていることである。

 映画は秘密を紐解くためウルヴァリンの過去を描くが、19世紀末に生まれた彼は最初はローガンという名前だ。何しろ父殺害によってミュータントとしての能力が覚醒するのだからスタート地点から悲劇である。不老不死で異形の自分を追い込むかのように、南北戦争からベトナム戦争まで数々の戦いに加担するのも、自分自身の居場所がないためだ。心の平和を求める気持ちと闘争本能の狭間で苦悩するローガンとは裏腹に、同じくミュータントの兄ビクターは次第に凶暴性を増していき、ついにローガンの最愛の女性ケイラを殺してしまう。ローガンは兄ビクターへの復讐を誓うのだが、父親殺しに兄への憎悪と、彼の過去はまるでギリシャ悲劇のよう。かくして、壮大な兄弟ゲンカの幕が開く。

 ただしそれは単なる復讐ではなかった。ローガンが選んだ道は、謎の組織と取引し、自分自身を最強の武器に作り変えること。地上最硬の超金属アダマンチウムを全身の骨に移植する改造手術を受けて生まれたのが人間兵器“ウルヴァリン”なのだ。拳から飛び出していた脆い骨は、すべてを切り裂く超金属の爪に変わった。驚異的な治癒能力と、戦場で培った戦闘能力に磨きがかかったのもこの時だ。ウルヴァリンを象徴する要素はすべて復讐のために作られたという事実が悲しい。さらに、鋭利な爪が切り裂く運命は、巨大な陰謀と衝撃的な事実へと導いていく。それは、彼の記憶すべてを奪うほどの絶望的な宿命だ。

 悲劇的な過去だけでなく、超絶アクションも見逃せない。軍用ヘリと大型バイクのチェイスや、最終決戦の場となる廃墟の原子力工場の上での激しいバトルはまさに破壊の美学。螺旋状に切り裂かれていく建物はまるでアートだ。そこは実はミュータントを閉じ込める秘密の実験施設で、ウルヴァリンにはある再会が待っている。「ファイナル・デシジョン」では愛する女性を敵に回す苦悩を味わったが、ウルヴァリンの爪は大切な人との絆を断ち切ってしまうのか。

 意外なのは、監督が南アの過酷な現状を少年の目から描いた秀作「ツォツィ」のギャヴィン・フッドだということだ。ハリウッド製アクション映画を撮る監督とは思わなかったが、善悪の葛藤を軸に物語を構成し、なかなかの健闘を見せている。ともあれ、ウルヴァリン誕生を語るこの「ZERO」は、未来へと続く気配を濃厚に漂わせた。ウルヴァリンとは先住民の言葉で、小型だが獰猛な哺乳類クズリを意味する。愛した女性との思い出であるこの名前の由来さえ、覚えていない悲しき戦士。それがウルヴァリンなのだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)破壊度:★★★★☆

□2009年 アメリカ映画 原題「X-Men Origins:Wolverine」
□監督:ギャヴィン・フッド
□出演:ヒュー・ジャックマン、リーヴ・シュレイバー、ダニー・ヒューストン、他


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