リミッツ・オブ・コントロール スペシャル・エディション [DVD]リミッツ・オブ・コントロール スペシャル・エディション [DVD]
映画は論文ではないのですべてを説明する必要はない。語られない部分に対して想像力を刺激してくれれば、その作品は十分に魅力がある。ジャームッシュのこの新作はまさにそんな1本だ。“孤独な男”というコードネームの殺し屋が、ある任務を遂行するためにスペイン中をさまよう。その任務とは「自分こそ偉大だと思う男を葬れ」というもの。そんな彼の前にさまざまな仲間たちが現れては消えてゆくが、彼らは一様に謎めいた言葉を残していく。

主人公はジャームッシュ作品の常連のイザック・ド・バンコレだが、彼の周囲をビル・マーレイ、ガエル・ガルシア・ベルナル、ティルダ・スウィントン、工藤夕貴ら、国際俳優たちが豪華に彩る。トレンチコートやカウボーイハットなどで、映画ジャンルを睨んだ演出を施しているので深読みしたくなるが、これはジャームッシュの遊び心だろう。物語は、暗殺という衝撃的な結果に向かって進むが、会話や行動は犯罪とはほとんど無関係。美術館の絵はヒントだが、それも決して答えではない。ストイックに任務を遂行した主人公は再び空港から旅立つが、宇宙には中心も端もないという映画冒頭のセリフのように、この物語も男の意識の流れの中のある部分を切り取ったにすぎない。決して分かりやすい映画ではないので誰にでもは勧められないが、物語として納得したいのなら、心の旅ととらえてみるのもいいだろう。現実と非現実が交差する光景を色彩豊かに写したクリストファー・ドイルの映像が魅力的。何より、不可思議な幻想世界を漂う感覚が、ジャームッシュ好きにはたまらなく快感なのである。
【70点】
(原題「The Limits of Control」)
(スペイン・アメリカ・日本/ジム・ジャームッシュ監督/イザック・ド・バンコレ、ティルダ・スウィントン、工藤夕貴、他)
(夢うつつ度:★★★★☆)

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