スペル コレクターズ・エディション [DVD]スペル コレクターズ・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
不気味な老婆に呪いをかけられたヒロインの壮絶な運命に絶句。怖くて笑えるお得な1本だ。 【70点】

 銀行のローンデスクで働くクリスティンは、仕事ができることを上司にアピールするため、顧客の老婆のローン延長願いをきっぱりと断った。ジプシー風のその老婆は逆恨みし、クリスティンに不気味な言葉で呪いをかける…。

 呪い。この言葉からは、いまさら感とやっぱり感の二つが同時に漂ってくる。ホラー映画の古典的アイテム“呪い”をモチーフに、問答無用の恐怖を活写するのが本作「スペル」だ。監督のサム・ライミは、今では大ヒット作「スパイダーマン」で知られるが、彼の原点は「死霊のはらわた」。泣く子も黙るホラーの巨匠が、長年あたためた企画をついに映画化しただけあって、格が違う。

 そもそも呪いをかけられるヒロインにはほとんど非はない。薄汚い老婆はローンの延長願いも3回目で、銀行側がそれを断るのは正当なものなのだ。返済のあてもないのに、ひざまずいて懇願するのも芝居がかっている。案の定、願いを断られると「自分に恥をかかせた」と態度を豹変。いわゆる逆ギレだ。しかし老婆に理屈は通用しない。ここから物語はがぜん活気づく。

 まずは呪いをかけるところから。夜の駐車場で待ち伏せした老婆と、クリスティンが格闘するシーンだが、まるでアクション映画並みの激しさで驚かせる。見かけによらず体力がある老婆が入れ歯を吹き飛ばして闘えば、若いクリスティンはホチキスなどの地味な文房具で懸命に応戦。怖さを通り越して笑いが出る。ありえない、というより、あってはならない強烈な老婆の気合は、呪いをかけなくても十分に怖い。だが、謎の呪縛は確かにかけられた。

 その呪いは3日間続いた後に、ターゲットの魂もろとも地獄へ連れ去るというすさまじいものだ。おどろおどろしい幻覚と不気味な幻聴が炸裂する。たまらず謝りに行けば老婆は既に死んでいたという想定外の状況も、ショッキングだ。すがる思いで教えを請うた占い師に、強力な呪いがかかっていると告げられ、必死でそれを解こうとするが、タイムリミットは刻々と迫る。本当の敵は老婆ではなく、人食い鬼に変身する女神ラミアなのだが、老婆に扮するローナ・レイヴァーのキレッぷりの前では、ギリシャの女神も影が薄い。

 元来、ホラー映画というのは、いい意味での悪趣味が必要不可欠というのが私の持論だ。本作は、この条件を見事に満たしている。目が飛び出し、口に物差しが突き刺さるなど、笑いを喚起するショック場面のつるべ打ちで、ファンキーなムードを醸しだすかと思えば、古びた屋敷での悪魔祓いや深夜の墓地での格闘と、クラシックな仕掛けも忘れない。追いつめられながらもけなげに闘うヒロインの心理も丁寧だ。単純な血しぶきに頼らない、創意工夫に満ちた恐怖描写は、ホラーの名手の真骨頂である。何よりも、小さな不親切を発端に、破壊の限りを尽くす呪いのパワーが圧巻だ。そして迎えるクライマックス、前半にさりげなく登場する、ある小道具を使うそのオチは、ホラーの収まりどころを心得ていて、思わず「上手い!」と膝を打つ。ラミアの魔力と老婆の執念を見せつけるラストは、華麗なるフィナーレ。さすがはサム・ライミと唸った。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)執拗度:★★★★★

□2009年 アメリカ映画 原題「DRAG ME TO HELL」
□監督:サム・ライミ
□出演:アリソン・ローマン、ジャスティン・ロング、アドリアナ・バラーザ、他

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