アバター (ジェームズ・キャメロン 監督) [DVD]アバター (ジェームズ・キャメロン 監督) [DVD]
◆プチレビュー◆
深淵な世界観が見事なSF冒険物語。最新の3D技術で提供される美しい映像に思わず息を呑む。 【90点】

 22世紀。戦傷で下半身不随となった元海兵隊員のジェイクは、亡き兄に代わってアバター・プロジェクトに参加する。目的は、5光年離れた衛星パンドラに眠る貴重な鉱物を得るため、先住民を排除すること。分身“アバター”により、再び身体の自由を得たジェイクは、未知なる星パンドラで任務につくが…。

 「タイタニック」のジェームズ・キャメロンは、凝り性の完璧主義者として有名だ。彼はこの「アバター」の構想に14年、製作に4年を費やしたという。カメラやシステムすべてが新開発のデジタル3Dで撮影された驚愕の映像を見れば、それだけの時間を要したのが納得できる。従来の3D映画は前方に飛び出してビックリさせる見世物的要素が強かったが、本作の3Dは、奥行きと深みに主眼を置く。また、実写とCGを融合したパフォーマンス・キャプチャーをさらに進化させ、限りなく実写に接近するテクノロジーとして3Dを活用している。映像革命とのキャッチフレーズは、決して誇張ではないのだ。

 アバターとは、意識をリンクして得た分身のこと。パンドラは星全体が強い磁気を帯び、人類には有害な大気に包まれているため、そこで活動するには、人間と、パンドラに住む先住民ナヴィの遺伝子を組み合わせたアバターを遠隔操作せねばならない。本作は、車椅子の主人公が、アバターによって再び縦横無尽に駆け回るという設定がクレバーだ。これはそのまま、映画館の椅子に座る“身動きできない”観客が、スクリーンで味わう解放感にスライドしていく。

 SF、ファンタジー、アクション、ラブストーリーといったジャンルの垣根を超える壮大な物語の前半は、パンドラの幻想的な光景に目を奪われる。熱帯雨林のような大自然、多様で未知の生物たち、翼竜が空を飛び、山々は宙に浮かぶ。細部まで作りこまれたそれは、緻密に構築された新世界だ。特に、夜になるとあらゆる植物が、青やピンクに発光する神秘的な光景には、恍惚感を覚える。聖なる木の精が浮遊する様は、夢を見ているかのようだ。ナヴィを立ち退かせるため、部族の特徴や弱点を探るはずのジェイクが、パンドラそのものに魅了されていくのが頷けた。やがてジェイクは、自然と調和し独自の文化を育むナヴィに溶け込み、族長の娘ネイティリと恋に落ちる。しかし、後半はロマンティックなトーンは一変。ジェイクは、人間のエゴと自分の任務に苦悩した末に、ある決断を下すことに。終盤の壮絶な戦いには心を揺さぶられる。

 物語は、人として成長するジェイクの心の旅だが、その裏側には、先住民を排除して築かれたアメリカの罪や、今なお資源を求めて、民主主義の名を借りて他国で争いを続ける現政権への批判が透けて見える。異文化との共存や環境保護を訴えること自体に新味はないが、ここまで先端的で美しい映像で語られたら、そのメッセージは否が応でも力強く響く。加えて、アバターの理念には、もはや肉体ではなく意識そのものが生命の絆だとする、一種の不死観がにじんでいた。パンドラの中心である母なる存在“エイワ”は、すべての生物の記憶を蓄積する。ならば次世代に伝えるべき記憶こそが生の証となろう。まるで太古の樹木の年輪のように、幾重にも重なる記憶。この映画で私たちは、今の自分の存在意義を改めて自問せねばならない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)映像美度:★★★★★

□2009年 アメリカ映画 原題「AVATAR」
□監督:ジェームズ・キャメロン
□出演:サム・ワーシントン、シガニー・ウィーバー、ゾーイ・サルダナ、他


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