ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 [DVD]ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 [DVD]
◆プチレビュー◆
北欧発のミステリーは、型破りのヒロイン像が興味深い。話は面白いが映画の構成は少々疑問。 【65点】

 ジャーナリストのミカエルは、大企業ヴァンゲル・グループの前会長ヘンリックから、40年前に失踪した少女の調査を依頼される。実業家の不正を告発し、失業中のミカエルは、天才ハッカーのリスベットと共に調査を始めるが…。

 本好きの人ならこの映画の原作で大ベストセラー小説のことは、ご存知のことだろう。謎解きの面白さはもちろん、従来のミステリーと趣を異にする異形のヒロイン、リスベットの存在が際立っている。彼女は、セキュリティ会社の有能な調査員だが、無愛想かつ攻撃的、少年のように小柄で、鼻ピアスにタトゥー、全身黒い服で武装している人物である。しかし彼女の持つ本当の武器は、天才的なハッカーの腕と映像記憶能力。社会に対して牙を剥いているかのようなリスベットだが、調査したミカエルの無実と彼の反骨精神を知り、自分から事件に係わっていくところを見ると、正義感は強いようだ。

 そんなリスベットとミカエルの2人が掘り起こす、16歳の美少女ハリエットの失踪の謎は、富豪一族の闇を浮き彫りにしていく。登場人物が多いので、少し分かりにくいが、ナチへの傾倒、育児放棄、アル中、遺産への執着など、一族の暴挙はただごとではない。調査を依頼したヘンリックが、自分の血縁者の誰かが同じ一族であるハリエットを殺したと考えるのも無理はない。だが事件の裏に潜む忌まわしい事実は、想像を超えるどす黒さだった。2時間半を超える長さだが退屈とは無縁で、ミステリーの規模も壮大。大いに見応えがある。ただ、原作ファン以外も見る、映画の構成としては果たしてどうなのか。

 まず、コンビを組む2人が出会うまで、随分と時間がかかる。それでも、原作の長さからするとかなりの駆け足なのだ。それは主役の紹介と背景を説明するパートだが、ミカエルはさておき、リスベットの置かれた状況は人物紹介と呼ぶにはあまりにすさまじく、悲惨なものだ。しかも、彼女の壮絶な体験は捜査する事件との直接的なつながりはないのである。2つの交わらないストーリーが同時進行する奇妙なフォルムは、映画として落ち着きが悪い。

 事件の全貌を知れば、不当に虐げられる女性の代表のようなリスベットが、独自のルールで反撃する描写の必要性は感じられる。だが、映画で初めて「ミレニアム」に触れる観客には、リスベットの物語は、別の作品で描く方が親切だ。泣き寝入りなどしない彼女の行動は痛快だが、だからといって決して傷が癒えるわけではない。ドラゴンのタトゥーが刻まれた身体以上に心が傷ついたヒロインに、より感情移入するために、映画1本分の時間がほしい。

 スウェーデン語の原題は「女を憎む男たち」の意味。福祉大国のこの国は、実は女性など弱者に対する虐待の件数が多く、しかも表だって問題にするのを避ける傾向があるそうだ。孤島に封印された事件の謎は、この原題の意味を照射しながら解決を見る。原作者のスティーグ・ラーソンは、この「ミレニアム」シリーズの出版を前に、50歳の若さで急死。2部と3部はすでに映像化されているそうで、全篇、社会に潜む不正や暴力、差別を扱うというから、気骨がある。北欧に誕生した孤高のヒロイン、リスベットの痛々しい生き様は、見ていてヒリヒリするが、彼女の鮮やかな活躍は、もう少し見てみたい。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)社会派ミステリー度:★★★★☆

□2009年 スウェーデン映画 原題「THE GIRL WITH THE DRAGON TATTOO」
□監督:ニルス・アーゼン・オプレウ
□出演:ノオミ・ラバス、マイケル・ニクヴィスト、スヴェン・バーティル・トープ、他

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