ラブリーボーン [DVD]ラブリーボーン [DVD]
◆プチレビュー◆
14歳で殺された少女の視点で描く物語は、意外な方向から生を肯定する。幻想的な映像が美しい。 【70点】

 スージーは14歳のときに、近所に住む男から襲われ殺された。彼女は美しく不思議な場所へ辿り着く。ここは天国? スージーはその場所から、悲しみに沈む家族や野放しの犯人を見つめ、何とか自分の思いを伝えようとするが…。

 あの世とこの世の境のような場所から、現世をみつめる少女。この立ち位置が何といってもユニークだ。少女の胸の内にある感情は、理不尽に殺された無念、犯人への憎しみ、何より、自分の死によって崩壊していく家族に対して、何もできないもどかしさ。カトリックには煉獄(れんごく)という考え方があって、小さな罪を犯した死者の霊が悔い改めて天国へと向かう、浄化の場があるが、何の罪もないスージーがいるその場所では、何をどう浄化すればいいのか。映画はこの問いに不思議な道のりで答えていく。

 ホラー映画ならスージーは幽霊になって犯人に復讐…という展開になろうが、この映画は無慈悲な殺人事件の解決には主眼を置いていない。これはたった14歳で人生を終えた少女が、自分に起こった死という大事件を理解し、受け入れ、短いながらに愛に満ちた生を肯定していく物語なのだ。14歳の身にあまりに突然降りかかった死は、スージーには受け入れがたいもの。彼女は混乱し不安になりながらも、短い人生のあらゆることをゆっくりと咀嚼していく。姿は14歳のままだが、彼女の心は成長するという設定が上手い。

 風変わりな物語と共に映画を魅力的にしているのは、独創的なビジュアルだ。神秘的な色彩とシュールな構図で、スージーの心境に寄り添うように姿を変える魔法のような情景が素晴らしい。スージーの立つ光り輝く水面の先には、父親が作っていたボトルシップが見える。深い森では見知らぬ少女と出会って仲良しになる。雪に覆われた山々のふもとの湖面には、巨大な赤いバラの花が。そして繰り返し現れる見晴らし台。現世でゆかりのあるアイテムを散りばめたその空間は、初めて見る感覚と懐かしい感覚の両方を兼ね備えている。

 それにしても、ショッキングな殺人事件を告げる導入部からファンタジーの世界をさまようこの物語が、これほどスリリングだとは。私たち観客は、犯人を知っているがどうすることもできないスージーと同じなのだ。捜査で行き詰る警察や両親の不和、命を狙われる大切な妹の運命、初恋の人レイへの消えない思いを、ドキドキしながら見守ることになる。スージーを演じるシアーシャ・ローナンは、過酷な運命を受け入れ再生する死者という難役を繊細に演じてくれた。彼女が自分よりずっと大人の登場人物たちを見守る、包容力さえ感じさせるのだからスゴい。今後がますます楽しみな若き演技派女優である。

 不条理な犯罪と被害者家族の癒えない傷。悲劇に見舞われたスージーの物語は、悲痛なだけに終わらず、癒しを与えてくれるものだった。残された者たちが悲しみを乗り越え、しっかりと前を向いて生きることが、死者に平穏をもたらすという死生観がこの物語のスタンスなのだ。道徳や法律とは少し違う正義や死後の世界の解釈で、賛否が分かれそうな作品だが、生の肯定を死者の思いからとらえ直した逆転の発想と、それを壮大なファンタジーとして昇華する作品世界には、ポジティブな感動がある。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)映像美度:★★★★☆

□2009年 米・英・ニュージーランド合作映画 原題「THE LOVELY BONES」
□監督:ピーター・ジャクソン
□出演:シアーシャ・ローナン、マーク・ウォールバーグ、レイチェル・ワイズ、他

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