しあわせの隠れ場所 Blu-ray&DVDセット(初回限定生産)しあわせの隠れ場所 Blu-ray&DVDセット(初回限定生産)
◆プチレビュー◆
孤独な黒人少年とある白人家族の絆を描く実話。サンドラ・ブロックの熱演に圧倒される。 【65点】

 裕福な白人女性リー・アンは、ある日、ホームレス同然の黒人少年マイケルに声をかける。彼の境遇を知って自宅に連れ帰り面倒を見るが、ある時、マイケルにアメリカン・フットボールの適性があることを知る…。

 サザン・ベルという言葉がある。米国南部の上流社会の女性で、勝気な美人を指す言葉だ。映画では「風と共に去りぬ」のビビアン・リーや「黒蘭の女」「偽りの花園」のベティ・デイビスが演じた女性像が思い浮かぶ。テネシー州の富裕層のリー・アン・テューイもそんなサザン・ベルの一人だ。だがこの人の場合、経済的に豊かであっても気どったところはなく、むしろ“肝っ玉かあさん”という言葉が良く似合う。明るく誠実で、いつもエネルギッシュに生きる女性リー・アンが手を差し伸べた黒人少年の名前はマイケル・オアー。やがて米国のNFLで活躍しスター選手になる逸材である。

 見知らぬ黒人少年マイケルを自宅に泊めた最初の晩は、リー・アンもちょっと懐疑的だった。翌朝、何か盗られてないか思わず家の中を見回すが、そこにはきちんとたたまれた毛布が。疑った自分が恥ずかしい。そんな思いが芽生えてからのリー・アンはマイケルの人生の手助けをすることを固く決心する。部屋を与え、後見人になり、学校にも通わせる。そこで彼にアメフト選手の適性があることを見出すが、それは成績表で評価された“保護本能”に目をとめたからだ。数字だけで判断せず、個性や人間性に目を向けて適性を見出す米国の教育制度の素晴らしさとともに、リー・アンの、優しさと厳しさ、ユーモアがミックスした指導力がマイケルの未来に明かりを灯した。ただ、他の上流社会の女性と違い、リー・アンがなぜこうまで気高い心を持った人間なのか、その背景が描かれないのが残念。彼女自身のことがもう少し知りたかった。

 リー・アンとその家族の真心に包まれて、マイケルは次第に前向きに変わっていく。だが変わったのはリー・アンも同じだった。白人家族が当たり前だと思っている、日々の食事や安全な暮らしに深く感謝するマイケルの姿に、思わずテューイ家全員が襟を正す場面は、施す側が逆に精神的豊かさを教えられる瞬間だ。最初は奉仕、慈善という“上から目線”だったリー・アンが、マイケルと心から語り合うシーンは胸を打つ。有望なアメフト選手として数多くの大学からきたスカウトの話を、いつしか自分たちが希望する進路へと狭めていた非を認めるように、道路の路肩にマイケルと並んで座るリー・アン。高級な服や靴が汚れるのもかまわず地面に座り、マイケルと同じ目の高さで話したとき、2人は本当の意味での家族になれたのだ。

 白人女性が不幸な境遇の黒人少年を助けたこの実話、一言で言うならば“いい話”だ。むろん映画なので、美化され誇張された部分も多いだろう。常識や因習にとらわれず、ひたすら自分の信じる善意を貫くリー・アンは、時に強引すぎるおせっかいやきのおばさんかもしれない。だが、この映画が単なるいい話に終わらないのは、リー・アンというサザン・ベルの暴走気味の愛情に、アメリカ人が愛する母親像が確かにあるからだろう。たとえ世間が何と言おうと、強くて優しくて、いつだって子供を大きな愛で見守る母親は、故郷のような存在だ。家も仕事もない少年にとって、差し伸べられた優しい手は未来と同じ。本物のアメリカン・ドリームは、こんな良心から生まれるのだと信じたい。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)感動度:★★★★☆

□2009年 アメリカ映画 原題「THE BLIND SIDE」
□監督:ジョン・リー・ハンコック
□出演:サンドラ・ブロック、ティム・マッグロウ、キャシー・ベイツ、他

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