シャーロック・ホームズ Blu-ray&DVDセット(初回限定生産)シャーロック・ホームズ Blu-ray&DVDセット(初回限定生産)
◆プチレビュー◆
世界一有名な名探偵は、タフな武闘派。科学と魔術が混在する19世紀ロンドンの空気が伝わってくる。 【65点】

 1891年、ロンドン。若い女性を狙う連続殺人事件が起きる。名探偵シャーロック・ホームズと相棒のワトソン博士は、犯人のブラックウッド卿の逮捕に貢献するが、黒魔術を操る卿は、自分はたとえ死んでも蘇ると豪語する…。

 知性、教養、記憶力、もちろん推理力も超人的なシャーロック・ホームズ。誰もが知るこの名探偵を、格闘系のヒーローとして再構築したことで、まったく新しいホームズ像が完成した。シャーロキアン(シャーロック・ホームズの熱狂的ファン)が、この斬新なホームズをどう感じるかはさておき、エネルギッシュな新ホームズからは、とんがった映像感覚と、時間軸をバラして物語を語るスタイルを得意とするガイ・リッチー節が聞こえてくる。

 いつも難事件に挑んでいるホームズだが、今回のそれは前代未聞。儀式めいた殺人を繰り返すブラックウッド卿は、邪悪な組織の頂点に立つことで、大英帝国を崩壊させ、世界を征服しようと企んでいる。国家を動かす貴族階級の鬼っ子である卿のアイテムは、呪い、死者の復活、黒魔術。こんな言葉が必要以上の恐怖を孕んでしまうのが、いかにも19世紀だ。産業革命や科学の発達によって驚異的な発展を遂げたロンドンの街には、同時に闇の世界が存在し、人々は科学で解明できないものを恐れ敬う。ただ一人、冷静なホームズを除いて。

 ただし、本作のホームズは、私たちが知っている今までの彼とは違う。演じるロバート・ダウニー・Jrのイメージそのままの、やんちゃキャラなのだ。何しろ事件がないオフには、うつ状態で散らかり放題の自室に引きこもる。相棒のワトソンが結婚して身を固め、自分とのコンビを解消すると聞けば、ダダをこねた末に相手の女性に意地悪したり。さらに、気取った英国紳士とばかり思っていたこの名探偵は、パワフルな格闘能力をも披露する。武闘派探偵ホームズにとっては、賭けボクシングでさえも先読みして解決可能な“事件”なのだ。

 かつてホームズを出し抜いたこともある知的な美女にして危険な女盗賊アイリーンの人探しの依頼から、事件はトンデモナイ展開に。やがてブラックウッド卿の謎へと収束する。今でもアイリーンにぞっこんのホームズは、食肉解体場や巨大な造船所、建設途中のタワーブリッジで、大奮闘を繰り広げる。手に汗握るのはハンス・ジマーの音楽のおかげだが、これが大仰すぎてやや興ざめ。どうせならガイ・リッチーらしくポップなサウンドがほしかったところだ。

 ともあれ、ブラックウッド卿の陰謀のからくりを、ホームズが知識と科学とユーモアで鮮やかに解き明かすプロセスは、娯楽映画ならではのテンポの良さで大いに楽しめる。しばしば暴走するホームズと良識派のワトソン。このアクション・エンタテインメントには、凸凹コンビの刑事ものの原点を見る思いだ。音楽にしろアートにしろ、後世まで残る英国のムーブメントは、何らかの形で階級闘争をテーマにしてきた。架空の人物であるシャーロック・ホームズもまたしかり。知識だけでなく時には拳を使ってさまざまな階級に踏み込んでいく。ちなみにホームズの生みの親のアーサー・コナン・ドイルは、眼科医から作家に転業した人物。本作のストーリーはオリジナルだが、やがてホームズがこんなアクション・ヒーローとして蘇ることも“見えていた”かもしれない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)アクション度:★★★★☆

□2009年 イギリス映画 原題「Sherlock Holmes」
□監督:ガイ・リッチー
□出演:ロバート・ダウニー・Jr、ジュード・ロウ、レイチェル・マクアダムス、他

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