やさしい嘘と贈り物 (マーティン・ランドー、エレン・バースティン 主演) [DVD]やさしい嘘と贈り物 (マーティン・ランドー、エレン・バースティン 主演) [DVD]
◆プチレビュー◆
その嘘は大切な人を取り戻す愛の治療。老いを見つめる物語をまだ20代の監督が作ることに驚く。 【70点】

 一人暮らしの孤独な老人ロバートは、ある日、メアリーという美しい初老の女性と出会い恋をする。ロバートは彼女に対し、昔から知っているかのような親しみを覚え、遂にプロポーズを決意するのだが…。

 この物語にはある秘密がある。登場人物たちは精一杯の愛情をもって嘘をついている。映画の最初から漂うほのぼのとした空気は、どこかいわくありげだ。時折挿入されるにじむような色彩、ボンヤリとした家族の光景、不安そうな表情。それらが積み重なっていく中で、秘密の輪郭が見えてくる。

 ロバートは自分で自分にクリスマス・プレゼントを贈るほど孤独な毎日を過ごしていた。だが戸惑いと驚きに満ちたメアリーとの出会いでみるみる変わっていく。勤務先のスーパーの若い共同経営者マイクに恋の悩みを相談したり、メアリーへのプレゼントを買い揃えたり、まるで10代のようにときめくロバートが微笑ましい。一方メアリーもまたロバートに他とは違う愛情を感じているようだ。だが彼女は、ふと悲しげな表情で彼を見つめることも。メアリーの娘アレックスも、母を心配そうに見守っている。さらにメアリーは、ひそかにロバートの家に入って、食料品を揃え、薬の準備までしている。一体、何のために? やがてロマンチックな二人の関係には思わぬ真実があることが分かる。

 季節は冬。二人が暮らしデートする小さな町は、雪景色とイルミネーションでまるで童話の世界を思わせる美しさである。白い町は、彼らには小劇場のようだ。ロバートの秘密とメアリーの嘘は、ここで上映されているビター・スウィートな恋の演目なのだ。記憶を序幕に、病への挑戦や家族の絆という“山場”を経て、静かな感動で幕が下りる。マーティン・ランドーとエレン・バースティンという2人の名優の演技が味わい深い。ときめき、不安、悲嘆、静かな決意まで、あらゆる気持ちの揺れを愛情と茶目っ気たっぷりに演じて素晴らしい。彼らの繊細な演技と物語のディテールをたっぷりと味わうためには、本当は秘密を事前に知った上で見る方がいいのではと思うほどなのだ。

 ニック・ファクラー監督はまだ20代だというから驚くが、もっと驚くのは人生の最晩年の生の輝きをみつめたこの物語を、彼が10代の時に書いたということだ。同じように若いサラ・ポーリーが監督した「アウェイ・フロム・ハー」が、似たテーマを扱いながら時に辛辣で不誠実な領域に踏み込んだのに対し、本作の個性は善意の虚構に徹したこと。それがこの小品を愛すべき佳作にした。

 老いというのは一般的にネガティブに捕えられる現象である。体や心が弱り、自分の周囲から人々が消えていく寂しさに耐えねばならない。だが決してそれだけではないはずだ。長いこと分からなかった歌の題名を偶然知ることがあるように、老いてまた愛する人に出会うことは、生きてきた御褒美のようなものだと思う。ロバートとメアリーの恋は、深い哀しみを帯びている。それでも、あたたかい感動が胸を打つのは、“時の恩寵”というプレゼントが見るものの心に届けられるからに違いない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)優しさ度:★★★★☆

□2009年 アメリカ映画 原題「Lovely,Still」
□監督:ニック・ファクラー
□出演:マーティン・ランドー、エレン・バースティン、エリザベス・バンクス、他


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