シャッター アイランド  [DVD]シャッター アイランド [DVD]
◆プチレビュー◆
孤島が舞台の謎解きミステリーの秀作。幻想的な心象風景が美しく、映像センスに鋭さがある。 【70点】

 1954年のアメリカ。連邦保安官のテディは、精神を患った犯罪者の収容施設があるシャッターアイランドにやってくる。鍵のかかった部屋から忽然と姿を消した女性患者を探す捜査だが、次々に不可解な謎が浮かび上がる…。

 このタイプの映画はネタバレ厳禁なので、物語の核心を語れないのがもどかしい。正気と狂気、現実と妄想、被害者と加害者。すべて境界線は曖昧だが、物語には多くの伏線があるので、映像の細部まで目を配っておきたい。やがてそれらがパズルのピースのようにつなぎあわされ、驚きの真実へと導かれる。原作者は「ミスティック・リバー」のデニス・ルヘイン。これだけで、本好き、映画好きには、物語がただのミステリーに終わらないことは想像できるだろう。

 主人公テディには、戦争と妻の死という二重のトラウマによる、深刻なPTSD(心的外傷後ストレス障害)がある。特に焼死した妻の残像は、今も彼の心から離れない。繰り返し登場するフラッシュバックの映像と、失踪事件の謎が同時進行する構成は、複雑だが見るものを引きつける。舞台は暗く澱んだ海に囲まれた絶海の孤島という密室。逃げ場のない場所で主人公は精神的に追いつめられるが、彼の心象風景を表す幻想的な映像が素晴らしい。戦争で目撃した大量殺戮、焼け崩れる妻ドロレスの姿、溺死する子供たち。テディにからみつくようにリフレインするこれらのイメージは、美しく悲痛だ。

 実はテディには、収監されている、妻を殺した放火魔レティスを探して復讐するという隠れた目的があった。失踪した患者レイチェルが残した謎のメッセージ「4の法則」を探ろうとするが、何かを隠すような医師の言葉や食い違う証言に、捜査は混迷、さらについに見つけたレティスの言葉が謎を深めていく。やがて崖の洞窟に隠れていたレイチェルと出会うが、彼女はテディにこう言った。「あなたは決して島から出られない。分かっているでしょう?」。

 テディを演じるレオナルド・ディカプリオの苦悩と焦燥の演技は、本作の大きな見所だ。ディカプリオはマーティン・スコセッシの最近のお気に入りの俳優で、本作で4度目のタッグとなる。かつてのスコセッシ映画の顔であるハーヴェイ・カイテルやロバート・デニーロに比べ、よりナイーヴな面が立ちあがってくるのが彼の個性だ。スコセッシ映画にはしばしば内面に善と悪を混在する人物が登場するが、それは本作でも継承されている。癒えない傷痕が人間の心を蝕んでいき、ついにむき出しの暴力へと至る。カトリック信仰を常に意識するスコセッシには、罪と許しは生涯をかけて取り組むべきテーマなのだ。

 事件の真相は、厳重警備の廃灯台で解き明かされることになるが、物語の重要なファクターとして、ロボトミー手術が登場する。秀作「カッコーの巣の上で」で印象的に描かれていたこの施術は、精神疾患の治療に有効と信じられていた脳の外科的手術だ。この映画の終盤に「どちらがいいかな?いい人間のまま死ぬのと、悪い人間のまま生きるのと」というセリフがある。ロボトミー手術とは精神の死を意味する。孤島での想像を絶する事件によって、自らの心の闇を見てしまうテディ。矛盾に満ちた現実の中で、善良な人間であろうともがいた彼を待つ結末は、やるせなく重い。根底にあるのは底知れない悲しみ。そこにこの作品の暗い感動がある。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ミステリアス度:★★★★☆

□2009年 アメリカ映画 原題「Shutter Island」
□監督:マーティン・スコセッシ
□出演:レオナルド・ディカプリオ、マーク・ラファロ、ベン・キンズレー、他

映画レビュー用BRバナー
←応援ポチ、よろしくお願いします!