告白 【DVD特別価格版】 [DVD]告白 【DVD特別価格版】 [DVD]
◆プチレビュー◆
淡々としたモノローグに戦慄を覚える異色ミステリー。レディオヘッドの音楽がレクイエムに聞こえる。 【70点】

 とある中学校の終業式の日。1年B組の教室で担任の森口悠子は「私の娘・愛美が死にました。警察は事故死と判断しましたが、このクラスの生徒に殺されたのです」と語り出す。衝撃的な告白に教室内は騒然となるが…。

 中島哲也監督といえば「嫌われ松子の一生」や「パコと魔法の絵本」など、色彩の洪水がトレードマークだ。だが本作では、モノトーンかと見紛うほどの暗い色調で画面を構成している。色を抑えたことで、時折挿入される魚眼レンズのような映像や、子供たちの唐突なダンスの異様さが際立った。さらに、怒りを押し殺したように篭った独白が、ゆっくりと物語の緊張感を高めていく。
 
 原作小説は本屋大賞を受賞したベストセラーなので、13歳が3歳の命を奪い、教師が生徒に復讐するというショッキングな内容をご存知の方も多いだろう。物語は早々と殺人事件の犯人を明かす、いわゆる倒叙ミステリーだ。だが本作は、犯人の罪を立証する一般のそれとは異なる。少年法に守られた犯人がどんな思いを抱えていたか、周囲の人間がどんな反応を示すのか、何より森口の仕掛けた復讐の罠がどんな風に犯人を追い詰めるのかを描く心理劇なのだ。

 告白だけで物語を綴る手法は、なるほど効果的だ。子供だけが持つ残酷で切ない感情が描かれる一方で、大人の歪んだ思いもまた切実に語られる。モノローグは虚実混じり合ったもので、自分に都合のいい真実や、時には孤独ゆえの妄想までも。幼稚な優越感とマザーコンプレックスに支配される修哉、劣等感に押しつぶされそうな直樹、理解を求めて裏切られる美月。鬱屈した感情が絡み合った時、何の罪もない愛美ちゃんの命が奪われた。殺人が自己主張と信じた末の犯行と、学校に蔓延するいじめは、他者を基準にしか物事をとらえられないという意味で根源は同じだ。そのことを森口はよく知っている。そんな子供を導けず正常な判断が出来ない大人もまた罪深い。過保護すぎる直樹のママや自己中心的な熱血教師ウェルテルは、当然、森口の復讐のコマになる。
 
 後味は決して良くはない。だが後味が悪いという感覚は少し違う。教師がこれほど恐ろしい罠を生徒に仕掛ける以上、自身も底知れない悲しみに沈む決意があるはずだ。松たか子演じる森口は、もはやこの世のすべてに決別しているかのようにクールに屹立している。森口の絶望は、津波のような一過性の破壊ではなく、じわじわと海面水位上昇を引き起こす終わりなき異常気象に似ている。「犯人は少年法で守られる。でもこのままにするわけにはいかない」。同様の無念を抱く事件が現実に多いだけに、主人公のこの言葉はリアルな憎しみとなって観客に迫ってくるだろう。犯罪の法的処罰などまったく念頭に置いていないところに、この映画の暗いカタルシスがある。

 冒頭、淡々と話し続ける森口の言葉は、宙を舞うように空虚に響き、生徒は誰一人として聞いてはいない。その虚しさが物語の結末にフィードバックする。学校、家庭、社会。誰がどこで教えても構わない。人間には命の尊さを知る場所が必要だ。そして人は誰もが愛される価値があると教える場所も。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ショッキング度:★★★★☆

□2010年 日本映画 原題「告白」
□監督:中島哲也
□出演:松たか子、岡田将生、木村佳乃、他

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