ミックマック スペシャル・エディション [DVD]ミックマック スペシャル・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
愛すべき変人たちのファンキーな復讐劇。このスラップスティック・コメディーの隠し味は反戦だ。 【70点】

 ビデオ店で働くバジルは発砲事件に遭遇。幸い命は助かったが、頭に銃弾を残したまま生きるハメになる。仕事も家も失った彼は、パントマイムで日銭を稼いでいたが、ひょんなことから、廃品回収業を営むおかしな一団に加わることに。ある時、人生をブチ壊した兵器会社を見つけた彼は仕返しを企てる…。

 どこかノスタルジックな映像、風変わりな登場人物、ブラックな笑いと独特のペーソス。それらが混然一体となり、不思議な密度で迫ってくるのが、大ヒット作「アメリ」で知られるジャン=ピエール・ジュネ監督の持ち味だ。ハリウッドでの仕事もあるが、やはりこの人は、母国フランスを拠点にして作る、レトロ・モダンな作品でこそ本領を発揮する。

 映画冒頭、西サハラで地雷のために命を落とすバジルの父親のエピソードがサラリと語られる。そこから一気に中年になったバジルが、ビデオ店で古い名画を見ている場面にシフト。少し孤独だが穏やかな彼の日々を描くかと思いきや、いきなり発砲事件が起こり、頭に銃弾をクラッたままホームレスへと転落する。このスピーディーな導入部が、ドライで実に良い。不幸を嘆くでもなく、ノンシャランと何気なく前向きに生きる主人公から目が離せなくなる。

 バジルは廃品回収の途中で、頭の中の銃弾を作った会社と、30年前に父を殺した地雷を製造した兵器会社を発見。「こいつらのせいですべてを失った!」。巨悪に対しなんとか仕返しをしようとするバジルに協力するのが、一芸に秀でたユニークな仲間たちだ。彼らは皆、社会的には“負け組”で、不器用なはみだし者ばかり。ギロチン男、ヘンテコ発明家、人間大砲、軟体女などなど。心優しい彼らをまとめるおっかさん的存在は、料理番のタンブイユだ。それぞれの特技でどんな作戦を繰り出すかは見てのお楽しみ。そこにはちょっぴりロマンスの気配もある。彼らの企てはどれも独創的で、とりわけクライマックスの“北アフリカのバカンス作戦”では、死の商人たちを徹底的にこらしめる。ギャグにしか見えないアナログ感覚満載の作戦の数々が愉快だが、最後のシメはYouTube。しっかりハイテクしてるのだ。

 主人公を演じるのは、仏を代表するコメディアンのダニー・ブーン。大きな身体にナイーブなハートを持つバジルを演じて、実に味がある。他に、ジュネ組のスタッフが多数集結するが、特筆なのは、本作の撮影監督に日本人の永田鉄男が参加していることだ。仏在住のこの名カメラマンは、ノスタルジーと毒が混じり合ったジュネ・ワールドを見事な映像で表現している。

 ミックマックとは仏語で“イタズラ”の意味。バジルと仲間たちは、映画好きのバジルが好むハンフリー・ボガードのようなさっそうとしたヒーローではない。特殊な能力があるのに、一般社会では居心地が悪い彼らは、オタク文化の代弁者だ。引きこもりのように暮らしていた彼らが擬似家族のごとく結束し本領を発揮したとき、思いがけないパワーが生まれる。復讐というよりいたずらと呼びたいその仕掛けは、「スティング」の心意気に「オーシャンズ11」の痛快を足して、ジャック・タチのエッセンスをふりかけた、ファンキーなからくりだ。物語には、さりげない反戦メッセージが透けて見えるが、それを声高には叫ばず、あくまでもドタバタ劇として活写するのが粋で良い。これこそジュネ流の、弱者のリベンジ、平和のエスプリなのである。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ウィット度:★★★★☆

□2009年 フランス映画 原題「MICMACS A TIRE-LARIGOT」
□監督:ジャン=ピエール・ジュネ
□出演:ダニー・ブーン、ミニク・ピノン、アンドレ・デュソリエ、他

映画レビュー用BRバナー


←応援ポチ、よろしくお願いします!