十三人の刺客 通常版 [DVD]十三人の刺客 通常版 [DVD]
◆プチレビュー◆
集団抗争劇の傑作をアクション大作としてリメーク。熾烈なバトルは侍の大義も忠義も蹴散らしていく。 【70点】

 島田新左衛門は、悪行の限りを尽くす明石藩主の暴君・松平斉韶(なりつぐ)を暗殺するため、13人の刺客を集めた。要塞に改造した宿場町で、参勤交代の帰路の斉韶一行を討つ計画だが、敵は名参謀の鬼頭半兵衛を中心にした大軍。やがて、13人対300人の壮絶な戦いの火蓋が切って落とされる…。

 工藤栄一監督の「十三人の刺客」(1963)は、カルトな名作だ。善良な農民を助ける傑作「七人の侍」と比較されたが、それは的外れ。大義と忠義という侍には共に譲れないコンセプトの政治的抗争は、明らかに時代を先取りしていた。独特の暴力描写で知られる三池崇史によるリメークは、天下万民のため暴君を討つという骨格は同じだが、圧倒的にスケールアップしたアクションが見所だ。

 凄いのは本作の“血の匂い”である。何しろ冒頭から切腹だ。主君の斉韶の暴挙を、老中に死をもって訴えるその場面から、前半は、要職を約束されている斉韶が、罪もない民衆を相手に凌辱と殺戮を繰り返す様が描かれる。この暴君は生来の狂人なのだが、前半のすさまじいエピソードで「こいつは生かしてはおけない」と誰もが納得するはずだ。だが仮にも相手は将軍の弟。忍びによる暗殺などではなく、あくまでも武士の手で決着をつけねばならない。

 集まった13人は皆、死を覚悟した侍ばかりだが、一人だけ偶然仲間に加わる山の民がいて、この男が、武士社会のしがらみを炙り出す存在として効いている。戦いは濃い霧の中で始まるが、13人対300人という荒唐無稽とも思える数的不利をさまざまな仕掛けでクリア、たちまち敵の数を削いでいく。現実に可能かどうかはさておき、さながら局地戦の兵法のようでワクワクした。そして響く新左衛門の怒声。「小細工は終わりだ!斬って斬って斬りまくれ!」。

 それからは個を消した壮絶な集団戦だ。血しぶきが舞う戦闘が約50分も続く。一人、また一人と倒れていく中、やがて新左衛門と、かつて同門だった鬼頭半兵衛との一騎打ちに。侍の大義と忠義の激突だが、半兵衛は暴君・斉韶が悪であることは百も承知だ。それでも戦わねばならないこの敵役の背負う不条理が、物語の傑出した楔(くさび)になっている。

 ただ不満なのは、ついに新左衛門が斉韶と相対した場面でのこのバカ殿の描き方だ。斉韶は常人の理解を越えた狂ったモンスター。自分が襲われているというのに「面白い。老中になったらこんな戦の世にしよう」とうっとりと言うような人物だ。なのに最後の最後になって「痛い」だの「怖い」だのと口走る。これにはガッカリした。痛みはともかく怖さなど、この人物に語らせてはならない。“普通の人”になってしまっては、刺客たちが命を投げ打つ意味がない。役所広司演じる新左衛門が、63年版の片岡知恵蔵に比べ、少々軽いのも気になるが、どこか冷めた現代人のようで、これはかえって効果的に思えた。

 様式美とは無縁の集団抗争のパワーの、なんと壮絶なことか。無論、オリジナルの先見性あってのことだが、時代劇を爽快や美意識ではなく、政治性と虚無感を含ませてリブートしたところが素晴らしい。だからこそ「侍とは面倒なものだ」との新左衛門の言葉が活きる。そしてそれらすべてを見届けて、生きるべき場所に戻っていく男の存在も。三池流・生の肯定の怒号が聞こえる。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)熾烈度:★★★★★

□2010年 日本映画 原題「十三人の刺客」
□監督:三池崇史
□出演:役所広司、山田孝之、伊勢谷友介、他

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