デイブレイカー [DVD]デイブレイカー [DVD]
◆プチレビュー◆
スタイリッシュなバンパイア映画で、クールな映像が魅力的。現代社会を照射する内容は考えさせられる。 【70点】

 2019年、バンパイアが地球上の大多数を占めるようになった世界。そこでは、人間は血液を供給する食料として飼われていたが、圧倒的に数が足りず絶滅寸前だった。血液学者のエドワードは、代用血液の研究を続けながら、なんとか人間を救おうと考えていたが…。

 バンパイアものとSFという組合せの妙が、この映画最大の勝因だ。本来はホラー映画の枠にいて、恐れられ、孤独な存在であるべきマイノリティのバンパイアが、近未来ではマジョリティとなり、自分たちに適した社会を構築して暮らしている。昼夜逆転の構図といい、人間とのパワー・バランスといい、バンパイアの暮らしぶりのディテールが興味深い。うすら寒い平穏が、今までにないバンパイア映画としてこの作品をユニークなものにしている。

 物語の個性はそれだけではない。食料不足によりバンパイアの世界にも格差が生まれ、血液が欠乏すると“サブサイダー”という凶暴なモンスターへと変貌してしまうという緊張感のある設定が上手い。しかも、主人公エドワードは、元バンパイアの人間という例外種のコーマックに出会い、人間に戻ることが治療と気付くことから、話は意外な方向へと転がっていく。その間に、アクションあり、スプラッタありで、まったく飽きることがない。

 興味深いのは、不老不死のバンパイアの世界でありながら、我々が住む現代社会と問題点が酷似していることだ。エドワードの上司である巨大製薬会社社長の頭には、人間の血液を商品とする非情な利潤追求しかない。特権階級と貧困層という構図は、格差社会そのものだし、血液不足によるバンパイアとサブサイダーの抗争は、食料や資源を求めて繰り広げられる戦争を連想させる。

 何よりビジュアルがクールで魅力的だ。全体がスタイリッシュな印象なのは、モノトーンとブルー系の映像で統一されているため。苦悩する主人公がよく似合うイーサン・ホークが、そんな世界にたたずむ様はそれだけで絵になる。同時に、そこはかとないユーモアもある。バンパイアたちは郊外の住宅地から都心のオフィスに出勤し、途中で立ち寄るコーヒー・ショップでは血液入りのブラッド・コーヒーを飲む。「血をめぐんで」と書いた紙を持った浮浪者もいれば、紫外線注意のアラートも鳴り響く。ディテールの細かさが実に楽しい。

 冒頭、少女が遺書を書いている。そこには「不老不死で永遠に生きるなど耐えられない」との言葉が。そして彼女は、夜明けに外に座って太陽を浴び、炎となって自殺する。インパクトのあるオープニングでぐっと観客の心をつかむこの映画、人間のままであろうとバンパイアになろうと、はたまたそれらの種を行き来しようと、そこには格差と争いが必ず存在するというペシミスティックな世界観がベースだ。さらにその選択肢の前に、人間の“成分”そのものが、毒にも薬にもなるというジレンマがある。進化という枠組みでとらえ直してみると、この映画はいく通りもの解釈が可能なのだ。バンパイアものとSFのクロスオーバーの狙いは、案外そこにあるのかもしれない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)スタイリッシュ度:★★★★★

□2008年 豪・米合作映画 原題「DAYBREAKERS」
□監督:ピーター・スピエリッグ、マイケル・スピエリッグ
□出演:イーサン・ホーク、ウィレム・デフォー、イザベル・ルーカス、他

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