ロビン・フッド ディレクターズ・カット版 (2枚組) [DVD]ロビン・フッド ディレクターズ・カット版 (2枚組) [DVD]
◆プチレビュー◆
伝説的義賊の誕生秘話を虚実を巧みに絡めて描く歴史アクション。肉食系オヤジヒーローに注目だ。 【65点】

 12世紀末。イングランドの十字軍遠征の兵士として帰国途上だった弓の名手ロビンは、フランスで、ある英国人騎士の暗殺現場に遭遇。彼の遺言でノッティンガムの父親に剣を届ける。領主サー・ロクスレーから屋敷に留まるように懇願されたロビンは、次第に領民や未亡人のマリアンとも心を通わせていく…。

 中世の吟遊詩人が歌った伝説の義賊ロビン・フッド。だがこの映画での彼は、まるで実在の人物のように歴史に溶け込み、リアリティーをもって観客に迫ってくる。あまりに有名なロビン・フッドの物語は、何度となく映画化され、かつてエロール・フリン、ショーン・コネリー、ケビン・コスナーなどが、それぞれの持ち味で演じてきた。それではこのラッセル・クロウのロビンの存在意義とはなんだろう。すでにヒーローとして正義を行なうロビンではなく、どうやって彼が己の運命と向き合い、戦う意義を見出していったかを、分かりやすく紐解いていく。これはいわば、ロビン・フッド・ビギニングなのだ。

 そんな知られざるロビン・フッドを演じるのがオスカー俳優のラッセル・クロウ。この俳優は、何をやってもオレ様状態なのだが、そんな彼だからこそ、男気たっぷりのアウトロー系オヤジ・ヒーローがぴったりハマる。マリアンとの恋も、出会った途端に一目ぼれという情熱ではなく、ゆっくりと互いの恋を熟成する大人モードだ。しかもマリアン役はケイト・ブランシェット。ただのしおらしい姫君ではないことは、簡単に予想できる。だがジョン王の悪政と凶作で苦しむ民衆の苦悩と、イングランドを狙うフランス軍の侵攻という二つの危機が迫る中、そうそう甘いラブ・ロマンスに時間を割くわけにはいかない。かくして、リドリー・スコット印の壮麗な戦闘へとなだれ込むというわけだ。

 リドリー・スコットのこだわり。それはやはり映像美。中世イングランドのなだらかな田園や深い森の自然描写の美しさは言うまでもない。歴史ものらしい衣装や建築、生活様式も、細部まで目配せが効いている。だがスコット監督の真骨頂は、クライマックスの戦闘シーンにつきるだろう。迫力の大俯瞰で見せる白い崖・ドーヴァーでのバトルには、目を見張った。何より、森のイメージのロビン・フッドを、海辺で戦わせるところがニクい。英国出身のスコットは、やがて世界の海を制するイングランドへの誇りを込めているのだろうか。それならば、黄金時代の象徴的君主エリザベスを演じたケイト・ブランシェットをキャスティングしたことも納得がいく。

 領主ロクスレーの息子の身代わりになるという設定はかなり突飛なのだが、ロビンがノッティンガムにやってきたのは、運命だったに違いない。自らの出自を知り、母国のために戦うと決めたとき、ロビンは、得意の弓だけでなく剣をも握る。主人公が戦うモチベーションを高めていくプロセスが、歴史に絶妙に重なった。伝説とフィクション、さらに重厚な史実を上手くブレンドさせた脚本は、娯楽性にあふれていて、手堅い出来栄えだ。何よりハリウッド大作ならではのスター共演で華やかさはバツグン。見る前は、手垢のついたヒーローものを何をいまさら…と思っていたが、見終われば、見事にスコット版ロビン・フッドを楽しめた。シャーウッドの森に住む義賊は最初から正義のヒーローだったわけではない。悪代官をこらしめて得意になる単純な暴れん坊でもない。ロビンは自らの意思で“ロビン・フッドになった”のだ。ヒーローとは、皆が望むその場所に誕生するものなのである。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)男気度:★★★★★

□2010年 米・英合作映画 原題「Robin Hood」
□監督:リドリー・スコット
□出演:ラッセル・クロウ、ケイト・ブランシェット、ウィリアム・ハート、他

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