ばかもの [DVD]ばかもの [DVD]
不器用すぎる恋は10年たってようやく本物の愛へと変わる。再会してからの部分がとても魅力的だ。群馬県高崎市。中途半端な大学生活を送る19歳のヒデは、偶然出会った強気な年上の女・額子(がくこ)と出会い、彼女の積極的な誘いで結ばれる。ヒデは額子の部屋に毎日通うほどのめりこんでいくが、ある日、額子は「結婚する」と一方的に言ってヒデを捨てる。卒業し就職し新しい恋人もできたヒデだったが、心のどこかで額子が忘れられず、虚しい気持ちを埋めるようにアルコールに溺れていく。一方で、額子も事故で人生を変える大怪我を負っていた。数年後、二人は変わり果てた姿で再会する…。

遊びのつもりで誘った年上の女。初めての女性を一途に愛する年下の男。ひどい仕打ちで唐突に別れを告げる額子という女性は、あまりに身勝手に見えるが、彼女は、これ以上一緒にいては自分がヒデにのめりこんでしまうことを知っていて、それを恐れたに違いない。物語前半のヒデは、どこにでもいる大学生で好きな女性と一緒にいられればそれだけで幸せというピュアな魅力がある。だが徐々にアルコールに溺れていく様はまさに転落人生。最初はビールのような軽いもの、次第に焼酎やウィスキーなどの強い酒がヒデの周りに転がっていく。ヒデというキャラクターにとってアルコールは、暴力を生むよりも、気力を奪っていくものなのだ。ヒデがアルコールから立ち直るプロセスがあまりにあっさりしていたので拍子抜けするのだが、最後に助けてくれるのは、家族と共に、本当に自分を愛してくれていた額子だったのが泣けるところだ。ひどい事故にあい離婚して一人で暮らす額子とヒデが再会してからの展開が魅力的で、ひきこまれる。額子の頭が白髪になっていて、それは実はヒデを心配したためだと知ったとき、自分の気持ちに素直になれなかった男女が、深い場所で結ばれていたことが分かる。複雑なキャラクター額子を演じる内田有紀が独特の存在感で素晴らしい。原作は、芥川賞作家・絲山秋子の同名小説。劇中、何度か相手のことを「ばかもの」と呼ぶが、それぞれに意味が違う。ラスト、光溢れる楽園のような場所で聞くこの言葉が、不思議なほど優しく響いた。
【60点】
(原題「ばかもの」)
(日本/金子修介監督/成宮寛貴、内田有紀、白石美帆、他)
(共感度:★★★☆☆)

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