トロン:レガシー 3Dスーパー・セット [Blu-ray]トロン:レガシー 3Dスーパー・セット [Blu-ray]
◆プチレビュー◆
シンプルなストーリーを革新的な映像世界が支えるSF超大作。新旧ブリッジスの共演が魅力的だ。 【75点】

 デジタル業界のカリスマ、ケヴィン・フリンの謎の失踪から20年。27歳になった息子のサムは、父からのメッセージを突如受け取る。父の消息を追って迷いこんだそこは、あまりに危険なコンピューターの世界だった…。

 1982年の「トロン」は、本格的にCGを駆使した世界初の作品として名をはせている。今見ると、どこかノスタルジックな香りがするが、コンピューターのシステムの中に放り込まれて、プログラムたちと戦うという世界観は、斬新だった。今やオスカー俳優のジェフ・ブリッジスのやんちゃな姿を拝めるので、本作鑑賞前に予習しておくとより楽しめるが、物語は続編といっても、まったく別物。前作のラストでプログラムの権利を自分のものにし、巨大企業エンコム社のCEOになったケビン・フリン。彼の息子サムが父を追って再びコンピューターの世界に迷い込む。そこは前作とは比べ物にならないくらい、美しく危険な場所だ。サムを待つのは衝撃的な事実だが、そこは現代っ子、あっさりとトロン・シティになじんでしまい、あっという間にバトル開始となる。

 映画ではテクノロジーの暴走はしばしば描かれる素材だが、本作ではプログラムが人間に対して反乱を起こすというからただ事ではない。父ケビンは自分が作ったコンピューター世界の理想郷に、これまた自分が作ったプログラムのクルーによって閉じ込められ、現実世界に戻れなくなっている。完璧を求める独裁者クルーは不完全なものの存在を許さず、トロン・シティと呼ばれる暗黒世界でプログラム同士の死闘ゲームを強いる。本作の一番のウリは、このトロン・シティの風景だ。どこまでも続くグリッドの地平、青とオレンジ、そして黒で統一されたサイケデリックな空間、猛スピードで疾走するバイク“ライト・サイクル”を駆り、持ち主の情報が詰まったディスクを武器にして闘えば、敗者プログラムは、キューブ状の粉末になって木端微塵に砕け散る。なるほど3D超大作と言うだけあって、すべてのデザインがクールで美しい。

 まばゆい蛍光色のバリアが立体的に迫ってくる迫力の映像に目を奪われるが、物語の軸は、米映画が昔から得意とする定番のストーリー、父と子の和解の物語だ。父に捨てられたと思いこんでいたサムが、父が創造したデジタル世界で奇跡的な再会を果たすことで、理解し合っていく。映像の革新性とは対照的に、ストーリーは普遍的で、ディズニーらしい安全性を感じるものだ。物語に驚きはないし、デジタル世界の成り立ちについては、バッサリと省力するなど不満な点はあるのだが、だからこそ集中して革新的ビジュアルを楽しめる。

 完璧な世界を求めるクルーと、不完全なものが存在する世界こそが理想と気付いたケビン。ブリッジスがケビンとクルーの二役を演じるが、クルーは20年前のブリッジスの姿だ。若き日のブリッジスが現在の彼と違和感なく“共演”することこそが、本作の映像の本当の革新性だ。現実世界に戻るポータル(出入り口)へと向かう父子に勝機はあるのか。サムを助ける謎の美女クオラの正体とは。さらにクルーと並ぶ重要なプログラム、トロンはどんな形で登場するのか。ラストには、クオラが渇望した“太陽の光”が優しく降り注ぐ。どれほど完璧でもデジタル・ワールドには太陽はない。慈愛に満ちた太陽が輝くのは、不完全でも愛すべきリアル・ワールドのみ。犠牲を払っても戻らねばならない場所なのだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)映像美度:★★★★★

□2010年 米映画 原題「TRON LEGACY」
□監督:ジョセフ・コシンスキー
□出演:ギャレット・ヘドランド、ジェフ・ブリッジス、オリヴィア・ワイルド、他

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