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◆プチレビュー◆
世界中の人間とつながりながら、大切な人との絆は失う皮肉。フェイスブック誕生に現代の価値観が透けて見える。 【85点】

 名門ハーバード大学の学生マーク・ザッカーバーグは、失恋がきっかけで女子大生の品定めのサイトを作る。やがてそれが巨大なSNS「フェイスブック」へと成長、マークと親友エドゥアルドはたちまち時代の寵児になっていくが…。

 世界最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)であるフェイスブック(Facebook)の生みの親、マーク・ザッカーバーグは、現役の実業家だ。そんな彼が主人公のこの物語には“今”の息吹を感じるが、ハイスピードで流れるネットの世界では、映画で描かれるストーリーすら遠い過去のこと。だからこそ、監督のデヴィッド・フィンチャーは、物語は、あくまでも映画の解釈だと宣言している。コンピューターの天才マークには、ネットで何か新しいことを生み出したいとの単純で強い欲求があった。一気に作ったシステムは、やがて巨大化。マークと周囲の若者たちは、その激流に飲み込まれていく。

 マークという人物は、正直、凡人には理解し難い。マシンガンのように早口で、コロコロと話題が変わる。その合間に、色々なことをひらめいてはアイデアを形にする彼は、かなり病的で変わっている。フェイスブックが結果として巨万の富を生み、彼が若き億万長者となった事実を私たちは知っているが、映画で描かれる主人公は、金儲けや売名に関心は薄い。それどころかドラッグや遊びさえ興味を示さず、常に勉強、あるいは仕事をする典型的なオタク青年だ。

 ガールフレンドを平気で傷つけ、女の子の品定めという下世話なマネを思いつくイヤな奴。ハッキングや他人のアイデアをちゃっかりいただいても罪悪感など感じない危ない奴。それがマークだ。同時に彼は、広告をダサいといやがり、ナップスターの創業者ショーン・パーカーの「The Facebookの“THE”をとって名前をシンプルにしろ」とのアドバイスに、自分と同じ臭いを感じ取る。利益優先の起業ではなく、ネットを使って、社会に新しいムーブメントを作りたいと夢見た。この価値観もまた彼の一面なのだ。

 映画冒頭、マークは、エリート学生のウィンクルボス兄弟から、また創業時の共同経営者で唯一の友エドゥアルドから、訴訟を起こされ、当事者全員がひとつの部屋で顔を突き合わせている。物語には3者の視点があり、フラッシュバックで、過去のフェイスブック誕生の経緯を語っていく。映画は、マークの行為の是非には言及しないが、バーチャルの世界で世界中の人間とつながるシステムを作った人間が、リアルの世界では、大切な友さえ失う皮肉を見ていると、主人公の、天才ゆえの孤独や傲慢が浮かび上がってくる。そんなネット世代の若者の実体を、若手俳優のジェシー・アイゼンバーグが見事に演じてみせた。某大な量のセリフの中に、他人の痛みに無頓着で、時に幼児性さえ感じさせる難役。今までインディーズ作品中心に活躍していたアイゼンバーグが、意外なほどの底力で主人公の屈折と悲哀を演じきる。

 監督のデビッド・フィンチャーは1962年生まれ。マーク・ザッカーバーグは1984年生まれ。この年齢差はそのまま時代の差異だ。インターネット世代の主人公を、フィンチャーは憐憫を持って描いたかに見える。バーチャルに依存し、リアルを疎かにした結果、成功と引き換えに孤独を得たのだと。だが本当にそれがこの映画のメッセージだろうか。ラストシーンで聞えるカチリという音は、マークがパソコンの画面を更新する音だ。彼が問いかけても、最もつながりたいその人からの返事はない。そこには確かに寂寞とした空気があるが、マークが更新しているのは同じサイトかどうかは本当のところ、分からないのだ。ネットの申し子の天才は、旧世代が心配する人間関係への疑念など微塵も気に掛けず、実はもう別の次元へと駒を進めているのではないのか。どんでん返しが十八番のフィンチャーだ。それくらいの“トリック”を仕込んでも不思議はない。確かなのは、21世紀の反体制は、ネットの海の中で誕生するということ。同時代性こそ、この映画最大の魅力である。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)知的エンタメ度:★★★★★

□2010年 アメリカ映画 原題「THE SOCIAL NETWORK」
□監督:デヴィッド・フィンチャー
□出演:ジェシー・アイゼンバーグ、アンドリュー・ガーフィールド、ジャスティン・ティンバーレイク、他


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