ザ・タウン (ベン・アフレック 監督・主演) [DVD]ザ・タウン (ベン・アフレック 監督・主演) [DVD]
◆プチレビュー◆
宿命から抜け出そうともがく青年の純愛と、クライム・アクションのからみが絶妙な「ザ・タウン」。監督アフレックの手腕は確かだ。 【85点】

 ボストン北東部チャールズタウン、通称“タウン”は、有数の犯罪地域。特に銀行強盗は全米で最多だ。タウン育ちで、プロの強盗一味を率いるダグは、ある時、なりゆきで支店長クレアを人質にとる。その後彼女を無事解放するが、キレやすいジェムが、クレアが同じ街の出身と知り、始末しようと言い出す…。

 ボストンというと、著名な大学が集まっているせいか、どこか知的な学術都市のイメージがある。だが「ミスティック・リバー」や「ディパーテッド」などの映画の中で描かれるそこは、多くの場合、貧困と犯罪がうずまくふきだまりだ。ここでは強盗がファミリー・ビジネスとなり、次の世代に受け継がれるほど、すさんでいる。母は家を出て、父は服役中というダグも、そんな人生を歩む一人。誰も傷つけないことを信条に強盗を繰り返しながらも、いつかここを抜け出して、まっとうに生きたいと切望する青年だ。幼馴染ジェムの過激すぎる行動にも辟易しているのだが、友情に厚く恩人でもあるジェムとの絆を断ち切るのは難しい。何よりタウンが新しい生き方をダグに許さない。

 そんなダグの心を揺さぶったのは、純粋で心優しいクレアとの出会いだった。自分の正体を隠して、彼女の動向を探るうち、ダグは恋に落ちる。銀行強盗のリーダーと、人質の女。クレアはやがて彼の正体を知ることに。だが、ダグは彼女との出会いによって、ボストン・レッドソックスのスタジアム襲撃という大仕事を最後に、犯罪から足を洗い、街を離れる強い決意を固めることになる。計画は成功するのか。幼馴染のジェムや仲間たちと決別できるのか。さらに強盗グループの黒幕である花屋のファーギーの卑劣な脅しと、彼の口から聞いた母の衝撃の事実を、ダグはどう受け止め、どう決着を着けるのか。映画は登場人物の人間性を丁寧に掘り下げながら、極上のクライム・サスペンスとして昇華していく。監督ベン・アフレックの巧みな演出は、すでに巨匠の風格さえ漂わせていて、目の肥えた映画ファンを釘付けにするだろう。

 そのアフレックは、本作で、監督、脚本、主演をこなす大活躍だが、決して自分だけが前面に出るオレ様映画にしなかったのが上手い。「グッド・ウィル・ハンティング」の脚本で盟友マット・デイモンと共にオスカーを手にした彼は、派手な演出より緻密なストーリーを重視していて、堅実さがうかがえる。監督第一作の「ゴーン・ベイビー・ゴーン」も、日本では劇場未公開と冷遇されたものの、素晴らしい人間ドラマで、この人の手腕に唸ったものだ。俳優兼監督の大先輩クリント・イーストウッドとの共通性を指摘されることが多いが、厳しい現実の中で生きる男たちの友情や純愛、譲れない誇りと葛藤は、なるほどイーストウッドを思わせる。渋いキャスティングにも共通性が見られ、脇役にクリス・クーパーやピート・ポスルスウェイトのようないぶし銀の名優を使うセンスが素晴らしい。

 出身地ボストンに強くこだわりながらも、タイトルは“ボストン”や“チャールズタウン”ではなく「ザ・タウン」なのはなぜか。それは本作が、世界中の、貧しく荒れた街のストーリーだからだ。暗くつらい現状から抜け出し、未来を求める青年の姿は普遍的で、いつしか私たちは、希望と絶望の間にいる主人公に手を差しのべたくなる。物語は、陽光が降り注ぐハッピーエンドではない。だが、柔らかい優しさで包まれる夕焼けのようなラストが、心にしみた。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)緊張感度:★★★★☆

□2010年 アメリカ映画 原題「THE TOWN」
□監督:ベン・アフレック
□出演:ベン・アフレック、ジェレミー・レナー、レベッカ・ホール、他


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