ブローン・アパート [DVD]ブローン・アパート [DVD]
社会派ドラマなのか、ミステリーなのか、ラブストーリーなのか。軸がはっきりしないので、せっかくの魅力的なキャストが生きてこない残念な作品だ。ロンドンに住む若い母親は、警察の爆弾処理班として働く夫と4歳になる息子と共に、平穏に暮らしていた。決して裕福ではく、夫の仕事は心配がつきものだが、それでも良き母、良き妻として過ごしていた彼女が、ふとしたことから知り合った新聞記者のジャスパーと関係を持ってしまう。ある日、ジャスパーとの情事の最中に、サッカー観戦に出かけた夫と坊やが爆破テロ事件に巻き込まれて命を落とすという悲劇が起こってしまう…。

テロの犠牲者の顔写真を巨大なバルーンにプリントして街の上空に浮かべるオブジェのような映像は、決して消えない悲劇の記憶を際立たせ、思わずハッとするセンスを感じる演出だ。だが、映画はテロの悲劇を浮き彫りにすることには明らかに失敗して焦点のボヤけた印象しか残さない。物語は、国際テロリストの大物であるオサマ・ビンラディンへの手紙という形で語られる。この語り口が、愛人との情事に溺れた若い母親の罪の意識とマッチせず、不自然なのだ。しかも、テロへの静かな抗議を描く社会派ドラマなのかと思っていたら、巨大サッカースタジアムでの爆破テロには、実は夫の上司も関わるある秘密があって…というサスペンス風な展開に。本当に愛していたのかどうかも分からないジャスパーとの関係もはっきりしないまま、ヒロインは街をさまよい、テロにつながる人物の家族に接触するがその目的も不明。これでは、見ている側はストーリーに集中できない。そもそも、主人公が欲望のままに新聞記者と関係を持つという設定が必要とも思えないのだ。ミシェル・ウィリアムズとユアン・マクレガーという実力派の共演なのに、これではあまりに惜しい。ヒロインには名前がなく、ただ“若い母親”というだけ。命を落とすことはなくてもテロに巻き込まれる可能性は、誰にでもあるということか。実際に地下鉄での爆破テロが起こったロンドンを舞台にしたことでリアリズムは感じられる。音楽は梅林茂が担当。遠い日に坊やと一緒に海で遊んだ幸せな記憶が繰り返し描かれ、浜辺を走る母子のかげろうのような姿が記憶に残った。
【40点】
(原題「Incendiary」)
(イギリス/シャロン・マグアイア監督/ミシェル・ウィリアムズ、ユアン・マクレガー、マシュー・マクファディン、他)
(共感度:★☆☆☆☆)


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