ヒア アフター ブルーレイ&DVDセット(2枚組)【初回限定生産】 [Blu-ray]ヒア アフター ブルーレイ&DVDセット(2枚組)【初回限定生産】 [Blu-ray]
◆プチレビュー◆
死と隣接した3人の男女が巡り会う物語「ヒア アフター」。これまでのイーストウッド作品とは少し違う手触りだ。 【65点】

 仏人ジャーナリストのマリー、霊能力がある米国人ジョージ、双子の兄を亡くした少年マーカス。臨死体験をしたマリーが書きあげた本が発売され、3人は何かに導かれるようにマーカスの住むロンドンで巡り会う。死に直面した彼らが見い出す答えとは…。

 死を深くみつめることで生の意味を知る。本作のテーマを端的に表すと、こういう言葉になるが、それは決して簡単なことではない。死後の世界や、死者との交流というスーパーナチュラルな物語を、常に現実をみつめてきたイーストウッドが監督するのは少し意外で、むしろ製作総指揮のスティーブン・スピルバーグの好みに近いように思う。だがイーストウッドには、信仰や宗教を隠し味にした「ペイルライダー」のような作品もあることを考えると、スピリチュアルな題材に対する興味はこの人の意識の根底にあったのかもしれない。

 運命的に巡り会う、国籍も性別も年齢も異なる3人は、皆、死によって影響を受けているが、死との“出会い”はそれぞれ異なる。マリーは東南アジアで津波に巻き込まれ、臨死体験をする。触れたのは自分の死だ。彼女は、それ以来、現実と上手く向き合えなくなってしまう。一方、死者と交信ができるジョージが自分の能力を持て余すのは、他人の死にまつわる情報に苛まされるため。「この能力はギフト(贈りもの)なんかじゃない。カースト(呪い)なんだ」。ようやく心が通い始めた愛する女性メラニーも、その力のためにジョージから離れてしまい、彼の孤独はますます深まった。この哀しいエピソードは、ジョージの能力の功罪を象徴していて、とても印象に残る。

 痛ましいのはマーカスだ。強い絆で結ばれていた双子の兄を突然失い、母とも引き離され、深い喪失感を感じている幼い少年は、もう一度兄に会いたいと願っていて、子供らしいまっすぐな思いで霊能力者を訪ね歩く。マリーやジョージのエピソードより、マーカスのそれがより切実なのは、彼が経験したのが、自分にとって大切な人に訪れた死だからだ。近年のイーストウッド作品では、愛する人を失う悲しみがしばしば描かれ、そのことがストーリーを激しくうねらせるのだが、本作ではイーストウッドの、登場人物たちを救済したいとの思いが、より強く感じられた。だからこそ、映画は、死を描きながら生を肯定するストーリーへと昇華していくのである。

 人間は死んだあとはどうなるのだろう? 誰もが一度は頭をよぎる疑問だ。イーストウッドは、ディザスター映画さながらの巨大津波をCGによってスクリーンに叩きつけて観客の意表を突いた後に、水中に、死後の世界の輪郭をぼんやり浮かび上がらせた。その不思議なビジョンはまるで夢のように静かに存在している。穏やかな死の世界と登場人物たちが、イーストウッド作品特有の渋い色彩や、そっと寄り添うように流れる音楽と溶け合う様は、コーヒーにじんわりとミルクが溶け込んでいく様子にも似て、ごく自然だ。生と死を明確に分離するのではなく、私たちの周辺に当然あるものとしての死を、肯定的に受け入れる。そのことをスピリチュアルな体験を通して描くスタイルは、リアルな人間ドラマを得意とするイーストウッドの新しい挑戦なのだ。1930年生まれの老巨匠は、映画に対して果敢なチャレンジ精神を決して忘れない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)スビリチュアル度:★★★★☆

□2010年 アメリカ映画 原題「HEREAFTER」
□監督:クリント・イーストウッド
□出演:マット・デイモン、セシル・ドゥ・フランス、ブライス・ダラス・ハワード、他


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