マイ・バック・ページ (妻夫木聡、松山ケンイチ出演) [DVD]マイ・バック・ページ (妻夫木聡、松山ケンイチ出演) [DVD]
◆プチレビュー◆
現実と理想の狭間で揺れる若者たちの苦い挫折の物語。妻夫木聡vs松山ケンイチの演技合戦は見応えがある。 【70点】

 1969年。大手新聞社の週刊誌編集記者・沢田は、全共闘や新左翼運動で社会全体が大きくうねる中、熱い理想を抱いて働いていた。それから2年後、梅山と名乗る男から接触を受け、武装決起の計画を知らされる。沢田は梅山の言葉に疑いを持ちながらも、不思議と彼に親近感を覚えていく…。

 この映画を作った山下敦弘監督は76年生まれ。60〜70年代の熱い政治の季節の夢と挫折を知らない世代だ。そのことが、作品に客観性を持たせている。結果的に、非常に政治的な題材ながら、時代と関わることで苦みを知る主人公の心情を描くエモーショナルな青春映画になった。

 沢田にはジャーナリストとしての潔癖さと若さゆえの甘さがある。梅山は、マスコミさえ利用する、うさんくさい男だ。そんな2人が善悪を超えた部分で共鳴しあったきっかけが、文学や音楽、映画だったりするのが、実にセンチメンタルだ。「真夜中のカーボーイ」のダスティン・ホフマンが好きだという梅山を信じてしまう沢田は、なるほど梅山が言うように“優しすぎる”。

 革命と権力とジャーナリズム。そのすべての背景にベトナム戦争があった時代の熱気は、経験してないものには、正直よくわからない。ただ、自分たちの手で社会を変えようという気概と暴力を短絡的に結びつける“イノセンス”は、革命の熱とは無縁の現代からは、一途に夢を追う青春そのものに見える。脆くも挫折していく結果まで知っているからなおのことだ。2人の運命は「駐屯地で自衛官殺害」というショッキングな事件で激しく交錯し、沢田は梅山に問う。「君らが目指したものって何だったんだ?!」。答えは永遠に出ない。

 原作は、評論家の川本三郎氏の同名ノンフィクションだ。薄気味の悪い活動家役の松山ケンイチが、終始、作品をリードしているかに見えるが、最後の最後に、妻夫木聡が涙を流す入魂の演技で一気に形勢が逆転する。苦い後悔と青春の終焉、人と距離を置いて生きる今の孤独な自分。それらすべてがないまぜになった、この泣くシーンは見事だ。劇中に沢田がデートするモデルの少女が「ファイブ・イージー・ピーセス」のジャック・ニコルソンが泣くところが好きだと言った。自分はきちんと泣ける男の人が好き、とも。この映画の主人公が“きちんと泣いてくれた”のが救いに思えた。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)青春映画度:★★★★★

□2011年 日本映画 原題「マイ・バック・ページ」
□監督:山下敦弘
□出演:妻夫木聡、松山ケンイチ、忽那汐里、他
チケットぴあ


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