BIUTIFUL ビューティフル [DVD]BIUTIFUL ビューティフル [DVD]
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◆プチレビュー◆
このビターな“余命もの”は、安易な救いとは無縁。ハビエル・バルデムが渾身の演技を見せる。 【70点】

 大都会バルセロナ。ウスバルは、不法移民への仕事斡旋や警察への仲介などで生計を立てながら子供2人を育てていた。ある日、体調を崩し訪れた病院で突然ガンと宣告される。家族にも告げられず思い悩むウスバルだったが…。

 余命僅かな主人公が、自分が生きた証を残したいと願う。黒澤明監督の名作「生きる」がすぐに思い浮かぶ。だが、本作の主人公ウスバルは「生きる」よりもっとシビアな状況だ。やりがいのある仕事などなく、時に法に触れる事さえする精一杯の生活には、夢もない。だが、社会の片隅でゴロツキのように暮らすこの男は、残されたすべての時間を愛する子供たちのために捧げると強く決心した。そこに初めて生の意味が浮かび上がる。

 別れた妻マランブラは情緒不安定で薬物中毒なのだが、ウスバルは再び家族として迎え入れる。子供たちにとって決して良い母親とは言えないが、それでも子供を愛しているマランブラの存在は、死の準備をしなければならないウスバルにとっては、正解ではなくても不正解ともいえない答えのようなものだ。それは、娘から「ビューティフルのスペルは?」と尋ねられ「BIUTIFUL」と耳で聞く通りの誤ったつづりを教えてしまうことと重なってくる。たとえ間違っていてもその言葉は、父が娘に残した精一杯の生きた証だ。

 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督は、デビュー作の「アモーレス・ペロス」から「バベル」に至るまで、複数の場所で複数の人間が織り成す群像劇のスタイルを貫いてきたが、本作では一つの場所、一人の男に焦点を定めた。だが過去作品との共通項は随所に発見できる。父の遺体、事故死した不法移民、死者と対話できる特別な能力。ウスバルの周囲にからみつく、異なった時制の死は、目に見えない群像劇のように見える。

 主人公が子供たちに遺したものは、家族で抱き合ったぬくもりだけだ。それでも闇の中から一片の希望を見いだそうとしたウスバルの姿は残像のように記憶に焼きつく。雪に包まれた深い森で、彼は生前会ったことがない父の、若き姿に問いかける。「向こう側には何が…」。死の恐怖から解き放たれ、安らぎがあることを願わずにはいられない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)悲痛度:★★★★☆

□2011年 メキシコ・スペイン合作映画 原題「BIUTIFUL」
□監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
□出演:ハビエル・バルデム、マリセル・アルバレス、エドゥアルド・フェルナンデス、他



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