コクリコ坂から [DVD]コクリコ坂から [DVD]
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◆プチレビュー◆
ファンタジックな要素を排したストーリーは、ジブリとしては新機軸。ビビッドな色彩が目を引く。 【60点】

 1963年、横浜。高校2年生の少女・海(通称・メル)は、海で行方不明になった父の無事を祈りながら、祖母の下宿屋を切り盛りしていた。由緒ある校舎取り壊し反対運動の中、海は高3で新聞部部長の俊と出会い、惹かれていく…。

 原作は高橋千鶴(作画)と佐山哲郎(原作)による知る人ぞ知る少女漫画だ。時代は1963年。価値観が激変した戦後を抜け、新しいものだけがもてはやされる高度成長期の扉が開かれようとしている。そんな中で出会った若く一途な男女の物語は、往年の日活青春映画のよう。海と俊の淡い恋、建物の取り壊しを巡る紛争、異母兄妹かもしれない海と俊の出生の秘密という試練が描かれる。

 本作が、ジブリ作品の中で特異なのは、ファンタジーや大冒険がないことだ。魔法もなければ、飛ぶシーンもない。現実的なストーリーは、明らかに大人向けなのだが、すべてが淡々とテンポよく進んでいく展開には物足りなさも感じるだろう。とはいえ、日常のディテールは丁寧だ。女性中心で暮らす古い洋館・コクリコ荘の風情やおいしそうな食事には目を奪われる。一方、男の巣窟である文化部部室、通称カルチェラタンのごちゃごちゃした感じもまた楽しい。取り壊しを阻止するため、女子たちによる大掃除でみるみる古い建物が美しくなるくだりは、すこぶる爽快。これが宮崎吾朗流の“魔法”なのだ。

 一方で「ゲド戦記」でもカンに障った説教臭いセリフには苦笑する。だが今回は、プチ学園紛争を背景に「古いものを壊すのは過去の記憶を捨てること」「人が生きて死んでいった記憶をないがしろにするな」という熱い言葉を、討論会という形で処理したのは、上手かった。若者が自分たちの力で何かを変えることが出来ると信じたのが60年代だ。それはやがて、カルチェラタンの存続を理事長に直談判し、出生の真実を確かめる“冒険”へとつながっていく。

 コクリコとは仏語でヒナゲシの意味。花言葉のひとつに“思いやり”がある。戦争に翻弄された両親の時代と、変化の中で生きる子供の時代がつながり、思いを受け継ぐ。その役目を担うのが、互いを思い合う海と俊だ。彼らは現代の大人たちの若き姿である。物語は、懸命に生きた人々に支えられた“今”を見据えているのだ。海は毎日信号旗をあげる。旗の意味は「安全な航海を祈る」。彼女の立つ位置からは見えないが、旗に答える俊がいた。海と俊がコクリコ坂を自転車で走り抜ける躍動感が、そのまま二人が信じた未来の輝きだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ノスタルジック度:★★★★★

□2011年 日本映画 原題「コクリコ坂から」
□監督:宮崎吾朗
□出演:(声)岡田准一、長澤まさみ、風間俊介、他
チケットぴあ


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